FDAブレークスルーセラピー指定の新規治療薬候補
独ベーリンガーインゲルハイムは5月15日、新規治療薬候補のホスホジエステラーゼ4B(PDE4B)阻害剤、BI 1015550について、特発性肺線維症(IPF)患者対象の第2相臨床試験結果を発表した。研究成果は、「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン(NEJM)」に掲載され、米国胸部学会(ATS)国際会議の最新ニュースセッションでも発表された。
IPFは、進行性線維化を伴う間質性肺疾患(ILD)のひとつ。IPFの症状には、労作時の息切れ、長引く空咳、胸部不快感、疲労感、虚弱がある。IPFは希少疾患として扱われるが、世界で約300万人が罹患し、主に50歳以上の男性に多く見られる。肺線維症を引き起こす可能性のある肺疾患は200種類を超える。肺線維症は、肺組織が不可逆に損傷し、肺機能やQOLに悪影響を及ぼす病気であり、命に関わることもある。
BI 1015550は、2022年2月、米国食品医薬品局(FDA)より、ブレークスルーセラピーに指定された。
BI 1015550群の中央値変化量はFVCの軽度改善示す、プラセボ群ではFVC低下
第2相無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験(NCT04419506)では、IPF患者(n=147)を対象に、経口薬BI 1015550 18mg1日2回投与の有効性と安全性を評価。試験登録前に抗線維化剤の治療を受けていなかった患者と、8週間以上にわたり安定用量の抗線維化剤の治療を受けていた患者のうち、対標準予測肺活量が45%以上の患者を12週間にわたりBI 1015550 18mgを1日2回投与する試験群とプラセボ群に2:1の比率で割り付けた。主要評価項目は、12週目の努力肺活量(FVC)(最大吸気位から最大呼気位まで一気に呼出した呼出量、mLで測定)のベースラインからの変化。副次的評価項目は、治験薬投与下で発現した有害事象の割合だった。
試験の結果、BI 1015550群のFVCの中央値の変化量は軽度改善を示し、プラセボ群ではFVCが低下。既存の抗線維化剤で治療を受けていなかった患者におけるFVCの中央値の変化量は、BI 1015550群は+5.7mL、プラセボ群は-81.7mL。抗線維化剤で治療を受けていた患者におけるFVCの中央値の変化量は、BI 1015550群は+2.7mL、プラセボ群は-59.2 mLだった。IPF患者の肺機能低下の抑制効果に関し、BI 1015550がプラセボよりも優れる確率は98%超としている。
同試験では、副次的評価項目も達成され、BI 1015550は、12週間にわたりIPF患者において許容される安全性と忍容性を示した。患者全体で最も多く報告されたイベント(患者の10%超)は下痢であり、すべてのイベントは非重篤例として報告された。新たな安全性イベントは特定されず、ベースライン特性は、両試験群でおおむねバランスが取れていたとしている。
IPFとPF-ILD対象P3試験、年内開始の見通し
同社は、第3相臨床試験プログラムを開始し、BI 1015550がIPFおよび進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)患者の肺機能を改善するかどうかの評価を進めていく予定。なお、第3相臨床試験プログラムは、年内に開始される見通しだとしている。
▼関連リンク
・日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社 プレスリリース