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慢性腎臓病、生活習慣改善指導の介入により長期診療継続と重症化予防-筑波大ほか

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2022年05月18日 AM11:15

外来診療に加えた定期的な生活/食事指導の介入は、重症化予防に効果的か

筑波大学は5月17日、全国49医師会のかかりつけ医に通院する40歳以上75歳未満の慢性腎臓病患者2,379人について、医師会ごとに、かかりつけ医による通常診療群と、専門医による定期的な慢性腎臓病診療プログラムを用いた生活指導介入群に無作為に分け、10年におよぶ長期的な介入の効果を調査し、その結果を発表した。この研究は同大医学医療系腎臓内科学/スマートウェルネスシティ政策開発研究センターの山縣邦弘教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Nephrology Dialysis Transplantation」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

慢性腎臓病とは、尿蛋白や腎機能の低下が3か月以上持続した病態と定義され、初期の段階ではほとんどが無症状である。しかし重症化すると、心筋梗塞や脳卒中にかかりやすくなったり、腎機能が悪化して透析治療や腎移植が必要になる。近年は、糖尿病、高血圧、脂質異常症といった生活習慣病の結果、慢性腎臓病を発症する例が最も多く、患者の大半は地元のかかりつけ医に通院しているが、自覚症状がないため、通院を中断して重症化してしまう事例もある。

慢性腎臓病の重症化を予防することは、患者の健康寿命を延伸し、さらには医療費の減少をもたらす。そのため、通常のかかりつけ医における外来診療に加え、医師、看護師、管理栄養士などによる定期的な生活指導や食事指導を含む診療連携強化指導が有効であると考えられるが、その具体的な効果は、これまで検証されていなかった。

3年半の介入では脳卒中/末期慢性腎不全への進行などに差はみられず

研究グループは、多施設長期コホート調査「FROM-J」として、2008年より3年半にわたって、全国49地区医師会のかかりつけ医557施設に通院する40歳以上75歳未満の慢性腎臓病患者2,379人を、地区医師会(クラスター)ごとに、通常診療群と診療連携強化生活指導介入群(以下生活指導介入群)の2種類の診療方法に無作為に割り付け、どちらが重症化予防に効果があるかを検証した。いずれの診療方法も、かかりつけ医が慢性腎臓病診療ガイドに準じた診療を行い、生活指導介入群にはさらに、受診勧奨や管理栄養士による3か月ごとの生活・食事指導、かかりつけ医への検査結果のフィードバック、必要に応じた専門医への紹介勧奨を含む、定期的な慢性腎臓病診療プログラムを実施した。

3年半の介入期間において、介入群では受診中断が減ること、専門医への紹介・逆紹介が良好に行われること、腎機能の悪化が有意に抑制されることは証明された。一方、脳卒中、末期慢性腎不全への進行などには差が見られなかった。

10年介入群で腎機能低下の年間進行速度が、45以上60未満の患者で有意に抑制

そこで研究グループは、その後の予後を研究開始から10年間に延長して追跡調査した。今回の検討では、心血管病の発症、腎代替療法の導入、推算糸球体濾過値(eGFR)の50%低下を複合した結果(複合エンドポイントを主要評価項目とした。

その結果、生活指導介入群では通常診療群より低い傾向は見られるものの、有意差(有意確率p=0.051)は認められなかった。これを項目ごとに比較すると、腎代替療法導入とeGFR50%低下については、いずれも有意差はなかったが、心血管病の発症は、生活指導介入群で有意に抑えられた(p=0.001)ことが明らかになった。生活指導介入群の診療支援が心血管病発症を回避するための治療必要数(Number needed to treat,NNT)は24.4だった。これは通常の診療に加え、生活指導介入群の診療支援を24.4人が受けると心血管病発症を1人回避できるということを意味する。

また、腎機能低下の年間進行速度は、eGFRが45以上60未満(正常値90以上)の患者において抑制されること、かかりつけ医と腎臓専門医との診療連携が、10年間を通算して、生活指導介入群で高率で行われることなど、生活指導介入群では有意な効果が見られた。

費用効果分析では14万5,593円/QALY、医療経済的に極めて有用

慢性腎臓病の治療法として、通常の薬物療法に加え、かかりつけ医のもとで定期的な慢性腎臓病診療プログラムを継続的に実施することで、患者の生活習慣の改善が図られるとともに、かかりつけ医と腎臓専門医による診療連携が進み、慢性腎臓病の重症化予防につながることが明らかになった。

さらに、このような長期的な介入の医療経済分析についても検討し、費用効果分析では14万5,593円/QALYと、日本で評価基準の閾値となっている500万円/QALYと比較すると医療経済的に極めて有用であることや、この介入を日本全国で継続した場合、10年目で医療費の追加コストが回収され、15年目には4,496人の新規透析導入患者の減少が見込めることが予想された。

「今後、介入プログラムが効果的に作用した部分を解析し、さらなる慢性腎臓病重症化予防策を明らかにする予定。また、より多くの施設でこのような介入プログラムが実践できる枠組みの構築が求められる」と、研究グループは述べている。

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