■製品供給には影響なし
2021年3月に業務停止処分を受けた富山第一工場は処分前の生産体制に戻っていない。同社によると、日医工本体が扱う1236品目のうち、169品目は出荷停止を含む出荷調整状態。子会社のエルメッドに製造委託しているうちのほぼ全ての72品目も販売を中止している。
今後の供給へのさらなる影響について、同社は「ADRは取引金融機関と協議を行っていくものであり、他の取引先に影響は及ばない。これまで通りの供給を続ける」と話している。
同社は、本業の回復が遅れ2期連続の赤字決算。同日発表した2022年3月期決算(連結)では、最終赤字額は当初予想の186億円を大幅に上回る1049億円まで膨れ上がった。米国上市予定のバイオシミラーなどの承認申請の大幅な遅れなどによる836億円の減損損失、製造スケジュールに見直しなどで廃棄原材料などによる26億円の棚卸資産評価損の計上によるもので、この状況を受け同社は再建を急ぐ必要があると判断。同日の取締役会で、事業再生ADRの申請を決めた。
当面の資金繰りを確保するためメインバンクの三井住友銀行からは「十分な融資枠を確保した」とし、投資ファンドのジャパン・インダストリアル・ソリューションズ(JIS)から最大200億円をメドに出資を受けることを確認したとしている。
事業再生ADRは、事業を継続しながら、債権者との協議・交渉により債務減免などによる経営状態を改善する仕組み。同社は26日に予定する第1回債権者会議で事業再生計画案の概要説明を行う。
その後、全ての取引金融機関と協議を進めながら、この仕組みに関わる国の第三者機関の調査、指導、助言を受けながら、事業再生計画を取りまとめる。同社は、「第1回債権者会議で定められたスケジュールに従い、全ての取引金融機関の同意による計画の成立を目指す」としている。成立時期のメドは明かしてないが「可能な限り早く成立するよう一丸となって取り組む」とコメントしている。
また、経営改善施策、金融機関協調による支援の継続、計画実施スケジュールなどについては今後、取引金融機関と協議する予定。経営改善施策については「自助努力による改善策と、より強固な収益体質の確立と財務体質の抜本的改善および持続的成長を目的として、資本増強を伴った財務体質の抜本的な改善」に向けJISの出資を受けながら取り組む。
21年9月に行った大手医薬品卸のメディパルホールディングスとの資本業務提携に伴う9.9%の出資と業務提携は継続する。
日医工は同日、社内に「経営改革本部」を新設。常務執行役員の三原修氏が営業本部長から異動して指揮を執る。同社は「役職員一丸となって不退転の決意で事業再生に取り組む」としている。
2021年3月、同社に5年の正会員資格停止処分を下した日本ジェネリック製薬協会は同社のADR申請についてコメントしていない。
厚生労働省医政局の安藤公一経済課長の下には、発表段階でADR申請の情報が届いていなかった。安藤課長は、本紙に「現時点で同社が製造する後発品の供給に影響はないと聞いているが、品質問題に端を発した後発品の供給問題がある中で、今後の再建に向けた状況や、本件が業界に与える影響、後発品の供給に与える影響について、業界団体ともよく連携しつつ、注視していきたい」と話した。