国立成育医療研究センターの「妊娠と薬情報センター」は、これまで郵送でのみ受け付けていた妊娠中・妊娠希望者のお薬相談の申し込みをオンラインでも開始した。システムの導入により利用者の利便性向上が見込まれるほか、全国の拠点病院との連携で情報提供までの時間短縮や妊娠中の薬物治療に関するエビデンスの拡充を図る。
同センターは医薬品が母体や胎児に与える影響について最新のエビデンスを収集・評価し、それに基づいて妊娠中や妊娠を希望している女性の相談業務を行っている。
オンラインシステムの構築により、妊娠と薬に関する悩みを持つ妊娠中・妊娠希望者がスマートフォンやパソコンから簡単にカウンセリングを申し込めるようになった。
カウンセリングを行う「妊娠と薬外来」を設置する全国の拠点病院に相談を申し込む場合、紙の問診票をダウンロードして郵送するという煩雑さがあり、申し込みからカウンセリング予約まで1週間程度要していた。オンラインでは、最短で翌日に拠点病院の予約が可能になるという。
同センターは、国内外の疫学研究をまとめた最新の安全性情報をカウンセリングにより相談者に提供している。全国56カ所の拠点病院があり、相談を希望する女性が近くの拠点病院で対応することが可能となっている。
今後は、こうした基盤を生かし、研究面でも拠点病院で共同のシステムを導入することでレジストリ(疾患登録システム)を通じ母親と子供の予後追跡データを収集していく。レジストリを用いた疫学研究を実施し、情報が不足している希少疾患や薬剤の安全性を検討する方向だ。
新型コロナウイルス感染症のような未知の感染症が流行した場合でも、迅速に疫学調査の結果を報告できる体制を整備する。
村島温子センター長は「妊婦と薬に関するエビデンスの確立は十分に行われていないのが現状。今後は製薬企業と協力して、市販直後調査にもシステムの活用ができるようにしたい」と述べ、妊娠中の薬剤使用で安全性情報のエビデンス創出に意欲を示した。