2021年6月に日本で承認、長期生存および有効性示す
スイスのエフ・ホフマン・ラ・ロシュ社は4月29日、エブリスディ(R)(一般名:リスジプラム)について、症候性I型脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy:SMA)の乳児を対象としたFIREFISH試験での3年間の新たな成績を発表し、長期生存および有効性を示したことを明らかにした。今回の長期成績は、第14回欧州小児神経学会(European Paediatric Neurology Society Congress)で発表されている。
エブリスディは、SMN(survival motor neuron)タンパク質の欠損につながる5番染色体の変異によって引き起こされるSMAを治療するためにデザインされた、SMN2スプライシング修飾剤。SMNタンパク質レベルを増加させ、維持することでSMAを治療するよう設計されている。SMNタンパク質は全身に見られ、運動神経と運動機能の維持に重要だ。2020年8月に米国、2021年3月に欧州で、6月に日本で承認を取得している。
FIREFISH試験は、I型SMAの乳児(登録時点で月齢1~7か月)を対象にエブリスディの有効性と安全性を評価した、2パートで構成された試験。パート1は用量設定を、パート2はパート1で選択された用量での有効性と安全性を評価。プールされた母集団には承認用量を3年以上投与した乳児が含まれている。
支えなしで座位を保持する能力を獲得した乳児、3年間投与後もその能力を消失せず
エブリスディを投与した乳児のうち推定91%(58人)が3年後に生存していた。24か月目から36か月目の間、支えなしで座る能力の維持または継続した改善を示した。BSID-III(Bayley Scales of Infant and Toddler Development – Third Edition)の粗大運動スケールの評価では、エブリスディを投与した評価可能な乳児48人のうち32人は、24か月目以降、支えなしで座位を少なくとも5秒間保持する能力を乳児が維持し、4人が新たに獲得した。また、支えなしで座位を少なくとも30秒間保持する能力を20人の乳児が維持し、15人が新たに獲得した。支えなしで座位を保持する能力を獲得した乳児は、3年間のエブリスディ投与後も、その能力を消失することはなかった。エブリスディを投与した乳児のほとんどが、36か月目まで経口摂取と嚥下の能力を維持していた。
エブリスディを投与したほとんどの乳児は、24か月目から36か月目の間、HINE-2(Hammersmith Infant Neurological Examination Module 2)よる運動機能の評価を継続して改善または維持した。この評価には、頭部を直立させることができる(維持:36人、獲得:3人、24か月以降に消失:0人)、座ったまま回転できる(維持:15人、獲得:11人、24カ月以降に消失:0人)、補助により立位を維持できる(維持:6人、獲得:5人、消失:1人)、および伝い歩きできる(維持:1人、獲得:2人、消失:0人)などが含まれる。
重篤な有害事象および入院頻度、経時的な低下が継続
主な有害事象は、発熱(60%)、上気道感染(57%)、肺炎(43%)、便秘(26%)、鼻咽頭炎(24%)、下痢(21%)、鼻炎(19%)、嘔吐(19%)および咳嗽(17%)だった。主な重篤な有害事象は、肺炎(36%)、呼吸窮迫(10%)、ウイルス性肺炎(9%)、急性呼吸不全(5%)および呼吸不全(5%)。肺炎を含む有害事象の発現は経時的に低下した。重篤な有害事象の発現も同様に低下し、12か月の投与期間毎に約50%ずつ減少し、投与開始1年目から3年目の間に78%減少した。
全体として、有害事象および重篤な有害事象は基礎疾患を反映したものであり、休薬や投与中止に至った薬剤関連の有害事象は認められなかった。入院頻度は、投与開始12か月間で患者あたり年間1.24回から、36か月間で患者あたり年間0.70回まで減少した。FIREFISH試験の主要解析以降、解析のデータカットオフ時点(2021年11月23日)までに新たな死亡は認められていないとしている。
▼関連リンク
・中外製薬株式会社 ニュースリリース