ワクチン2回接種後の移植レシピエント73人を調査
名古屋大学は5月12日、腎移植後の患者における新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対するワクチン2回接種後の抗体獲得率を調査した結果を発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科腎臓内科学の藤枝久美子医師、田中章仁病院助教、斎藤尚二病院講師、古橋和拡病院講師、安田宜成特任准教授、丸山彰一教授、検査部の菊地良介臨床検査技師、看護部の高井奈美看護師、泌尿器科学の藤田高史講師、加藤真史准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載されている。
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免疫抑制治療を受けている人、特に腎移植を受けた人は、移植した腎臓に拒絶反応が起きないように、免疫抑制剤を内服する。免疫抑制剤を内服している人は、SARS-CoV-2 mRNAワクチン接種後の抗体獲得率が低くなることが海外から報告されている。しかし、生体腎移植/献腎移植の割合や、ABO不適合腎移植の割合、免疫抑制剤など、移植を取り巻く状況は、日本と諸外国では異なる。具体的には、ドナーが少ないため、日本では生体腎移植の割合が高く、ABO血液型不適合腎移植は積極的に行われている。血液型の不適合を乗り越えるために、周術期の免疫抑制の強度がやや強くなることもある。また、そもそも民族差などがある可能性もある。したがって、日本と諸外国とで抗体獲得率に違いがある可能性があり、これを明らかにする必要がある。
今回の研究では、SARS-CoV-2 mRNAワクチンを2回接種した73人の移植レシピエント(男性45人、女性28人)について調査した。
抗体獲得率は31.5%
ワクチン2回接種時の年齢中央値は61歳(四分位範囲[IQR]、50-69歳)、移植時の年齢中央値は53歳(IQR、41-61歳)。移植からワクチン接種までの期間の中央値は74か月(IQR, 30-131か月)。BMI中央値は22.5(IQR, 21.0-25.7)。23人(31.5%)が抗体陽性だった。アナフィラキシーなどの副反応により2回目のワクチン接種を受けられなかった患者はいなかった。
BMIと移植からワクチン接種までの期間、抗体取得率と有意な相関
次に、統計学的な手法を用いて、抗体獲得に関連する因子を検討。その結果、BMIと移植からワクチン接種までの期間は、さまざまな要因を統計学的に調整しても抗体取得率と有意な相関があることが示唆された。
外来受診とワクチン接種のタイミングの関係から、2回のワクチン接種後、3週間から3か月の間に抗体価を測定している。時間経過と共に抗体の量が低下する可能性を検討するために、2回目のワクチン接種から抗体価測定までの日数と抗体価の相関を評価。この範囲の期間では、日数が経過して、そのために抗体の量が減少したという結果は得られていない。
腎移植後は、ワクチン2回接種後でも感染対策に注意が必要
今回の研究成果により、日本においても、腎移植後の人はSARS-CoV-2ワクチン接種後の抗体獲得率が低くなることが示された。
この結果により、腎移植後の人に関しては、2回のワクチン接種のみではSARS-CoV-2感染対策は万全でない可能性があり、引き続き感染対策に注意する必要があると考えられた。また、やせすぎの人、移植からの期間が短い人は、抗体獲得率が低い可能性があり、感染対策に特に注意が必要と考えられる。
今後は、2回接種後、時間が経つにつれて抗体の力価がどう変化していくのかを調べる必要があると考えられる。また、3回目の接種も進みつつあるが、それによる変化も調べていく必要があると考えられる、と研究グループは述べている。
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・名古屋大学 プレスリリース