医薬品など国民生活に不可欠な物資の安定確保・供給を目的とした経済安全保障推進法が、11日の参議院本会議で賛成多数により可決、成立した。政令で指定された「特定重要物資」の生産等を担う民間事業者を支援し、国が備蓄など必要な措置を取る。公布後、9カ月以内に施行する予定。
同法は、▽重要物資や原材料のサプライチェーン強靱化▽基幹インフラ機能の安全性・信頼性の確保▽官民で先端的な重要技術を育成・支援する仕組み▽特許出願の非公開化等による機微な発明の流出防止――で構成している。
重要物資や原材料のサプライチェーン強靱化では、医薬品や半導体など、国民の生存に必要不可欠だが原材料等を外部に過度に依存する物資について、外部の行為により国家・国民の安全を損なう事態を未然に防ぐため、国が政令で特定重要物資に指定する。
特定重要物資を所管する大臣は、物資または原材料を安定的に確保・供給するための取り組み方針を策定し、供給がひっ迫した際に必要な措置を実施する。
物資の生産・供給を担う民間事業者は、医薬品等に関する生産基盤の整備、備蓄、生産技術の開発・改良などを記した供給確保計画を所管大臣に提出し、認定を受ける。
認定された事業者は、安定供給確保支援法人等による助成、日本政策金融公庫法や中小企業投資育成株式会社法に基づく特例などを受けることが可能となる。
一方、事業者には年次報告や資料を開示する努力義務が課せられ、調査を受ける場合もあるとした。
事業者への支援では安定供給の確保が困難な場合、所管大臣は「特別対策を講ずる必要がある特定重要物資」に指定し、備蓄等の措置を取る。
新型コロナウイルス感染拡大による医療物資の世界的な供給停滞などを踏まえ、政府は重要物資や原材料に関するサプライチェーンの強靱化が必要と判断。同法案を2月に閣議決定し、今通常国会に提出していた。