2014~2018年に脳卒中後てんかんと初診断の症例、前向きに1年間のてんかん発作再発、予後を観察
国立循環器病研究センターは5月9日、脳卒中後てんかんにおけるてんかん発作の再発と発症1年後の臨床転帰の関連を解明したと発表した。この研究は、同研究センター脳神経内科の猪原匡史部長が代表を務める国内多施設共同研究(PROgnosis of Post-Stroke Epilepsy:PROPOSE)において、神戸市立医療センター中央市民病院脳神経内科の吉村元医師、国循脳神経内科の田中智貴医長、福間一樹医師、猪原匡史部長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Neurology」オンライン版に掲載されている。
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脳卒中後てんかんは、高齢者てんかんの原因の3分の1以上を占める疾患で、超高齢社会に伴いさらに増加することが予測されている。また、てんかん発作の再発を認めると、多くの高齢者は入院を要し、機能障害が増悪する可能性が考えられる。しかし、脳卒中後てんかんの機能予後に関し前向きに検討した報告はこれまでほとんどなかった。
今回の研究は、国立循環器病研究センター、神戸市立医療センター中央市民病院、済生会熊本病院、東京都健康長寿医療センター、中村記念病院、聖マリア病院、岡山医療センター、トヨタ記念病院の全国8施設で実施。2014~2018年にかけて脳卒中後てんかんと初めて診断された症例を対象に、前向きに1年間のてんかん発作再発、予後を観察。予後については、死亡およびmodified Rankin scale(日常生活動作における機能障害の指標)を調査した。
発作の再発回数が多い程、機能障害が増悪する症例が多い
初発の脳卒中後てんかんと診断された211症例のうち、1年間で50例(23.7%)にてんかん発作の再発を認めた。
予後については、25例(11.8%)に機能障害の増悪を認め、20例(9.5%)が死亡。発作再発との関連をみると、機能障害は発作再発がある方で増悪しやすいことがわかり、年齢、性別、発症前ADL、抗てんかん薬服薬状況などで調整してもその関連は変わらなかった(オッズ比3.26倍、p=0.01)。
さらに、発作の再発回数が多い程、機能障害が増悪する症例が多いこともわかった(傾向検定p=0.006)。一方で、死亡と発作再発の間には有意な関連はなかったとしている。
発作再発の予防が、機能予後を保つ上で重要な可能性
2021年、先行研究にて、脳卒中後てんかん治療に関して、新世代抗てんかん薬が旧世代抗てんかん薬と比較して、てんかん発作再発抑制、服薬継続率で有効性が高いことが報告されている。
今回の研究は、発作再発を予防することが機能予後を保つ上で重要である可能性を示した研究だ。脳卒中とてんかんの専門診療を行う医療機関が参加した国内多施設共同試験である同研究は、実臨床を忠実に反映した結果であると考えられ、今後の脳卒中後てんかん治療戦略において重要な知見と考えられる、と研究グループは述べている。
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・国立循環器病研究センター プレスリリース