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ePROで患者の状態把握-副作用管理へ取り組み広がる

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2022年04月20日 AM10:30

患者の日常生活における副作用や体調の異変をSNSやスマートフォンアプリなどを通じて収集する「」(電子的患者報告アウトカム)を診療などに臨床応用する試みが加速している。癌治療でも外来治療が増える一方で、日常生活での体調異変は把握しづらい。そこに患者自身が体調を入力する「」を介することで、医療者が患者の状態を把握しやすくなると期待されている。12日、慶應義塾大学医学部が乳癌薬物療法の副作用情報を一定の精度で収集できるシステムを開発したと発表したほか、今年に入って複数社が臨床研究や抗癌剤の副作用管理への活用を発表するなど広がりつつある。

慶大医学部が開発したのは、LINEを利用し、乳癌患者の健康状態や薬物の副作用情報を収集するシステム。外科学教室(一般・消化器)の林田哲専任講師、北川雄光教授、同医療政策・管理学教室の宮田裕章教授、帝京大学医学部外科学教室の神野浩光教授らの研究グループは、診療において活用可能であることを明らかにした。

このシステムでは、患者のLINEに症状などの質問を送り、患者が回答する。質問内容は、米国国立癌研究所(NCI)の研究班により開発された「」という抗癌剤の副作用評価を行う国際的な指標に準拠した形式内容で、一定水準以上の情報を収集できるようになっている。

具体的には、内分泌治療を行っている患者には「痛み」「関節痛」「便秘」「下痢」「ほてり」「発汗」「倦怠感」「しびれ」「不安」「不眠」という10項目の質問が定期的に送信される。患者は予め用意された回答をタップ操作で答える。

研究では、薬物療法が行われている患者73人に対して提供した結果、観察期間の435日間(中央値)に1万6417件の回答が得られた。1人当たりの平均回答数は224.9件で、そのうち65.2件(29%)に症状の発症が認められ、60歳以上の患者も良好な利用・継続が可能であることが確認された。患者の回答率は95.5%に上った。

これらの結果から、研究グループは、「毎日の副作用症状のモニタリングに用い、症状の増悪が観察された場合には、看護師や薬剤師などのメディカルスタッフからの連絡があり、来院の可否や服薬状況などについてのアドバイスを行うことが可能」としている。

LINEを用いたリアルタイムモニタリングにより、薬物療法の副作用を抑え、QOLの改善に寄与するかを検討する無作為化比較試験が進められている。

そのほか、今年に入って複数社が臨床研究や抗癌剤の副作用管理ツールとしての活用を発表している。

2月には、PHRサービスを提供するウェルビーが神戸大学病院、同院国際がん医療・研究センターが行う「癌患者を対象とした生活情報の記録基盤の構築に関する前向き観察研究」に、患者自身が体調を入力するPHR「」が採用されたと発表した。

同サービスは20年2月の提供開始以来、癌拠点病院を中心に24施設で導入され、臨床での活用が広がっているという。

今月1日には、3Hクリニカルトライアルと小野薬品が共同開発した副作用管理支援アプリの提供開始を発表した。癌治療に用いる免疫チェックポイント阻害剤「」などに見られる免疫関連有害事象への早期発見・治療につなげるアプリ。患者が日々の体調を入力し、免疫関連有害事象が疑われる記録がされた場合に医療機関には連絡を促す。

「ふくサポ」と名付けられたアプリは、3Hの開発したePRO「3H P-Guardian」を基盤に開発されたものだ。

20年7月には、アムジェンがヘルスケアIT企業のインテグリティ・ヘルスケアが開発したオンライン診療機能を備えた疾病管理システム「」を用いて、慢性皮膚疾患領域においてePROが臨床で有用かどうか検証するプロジェクトの開始を発表している。

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