体内におけるTTRの凝集・沈着機構はよくわかっていなかった
金沢大学は4月18日、ATTRアミロイドーシスにおける細胞外小胞によるタンパク質凝集体(アミロイド)の沈着機構の解明に成功したと発表した。この研究は、同大ナノ生命科学研究所の華山力成教授、医薬保健研究域医学系の河原裕憲助教、医薬保健研究域医学系脳老化・神経病態学(脳神経内科学)の山田正仁名誉教授(現・九段坂病院副院長)、大学院医薬保健学総合研究科博士課程学生の山口浩輝氏らの研究グループによるもの。研究成果は、「Frontiers in Molecular Biosciences」オンライン版に掲載されている。
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ATTRアミロイドーシスは、トランスサイレチン(TTR)が凝集し形成されたTTRアミロイドが全身の諸臓器に沈着し、進行性の臓器障害を呈する予後不良の疾患の総称で、TTR遺伝子変異に起因するATTRv アミロイドーシスと遺伝子変異を伴わない野生型ATTR(ATTRwt)アミロイドーシスに大別される。しかし、体内におけるTTRの凝集・沈着機構はこれまでよくわかっていなかった。
TTR+ヒト血液由来の細胞外小胞でTTR凝集化促進、遺伝子変異型で顕著
今回、研究グループは、血液中に存在する細胞外小胞がTTRの凝集化や細胞への沈着を促進することを見出し、TTRアミロイドの沈着機構の新たなモデルを提唱した。
まず、健康なヒト血液中に存在する細胞外小胞にTTRが存在するかを解析したところ、細胞外小胞の膜表面に存在することが明らかとなった。また精製したTTRをヒト血液由来の細胞外小胞と反応させると粒子サイズが増加することが高速原子間力顕微鏡(高速AFM)を用いることによってリアルタイムに観察され、TTRの凝集化促進を直接見て確認できた。なかでも遺伝子変異型TTR(V30 M-TTR)が顕著に凝集することがわかった。
変異型TTR+ヒト血液由来の細胞外小胞で顕著に沈着、患者は細胞外小胞が多い
次に、ヒト血液由来の細胞外小胞がTTRアミロイドの細胞沈着に関与するかを解析したところ、変異型TTRだけでは細胞への沈着はほとんど観察されなかったが、ヒト血液由来の細胞外小胞と一緒に添加することで、細胞へのTTRアミロイドの沈着が顕著に増加した。さらに、ATTRvアミロイドーシス患者と健常者の血液検体を用いて解析したところ、血液由来の細胞外小胞の量が健常者と比べて増加傾向にあり、細胞外小胞に含まれるTTRアミロイドの量が健常者と比べて低下していることもわかった。
今回の研究により、ATTRvアミロイドーシスにおいて細胞外小胞がTTRの凝集促進・アミロイド沈着に深く関与していることが明らかとなり、細胞外小胞の産生を抑えることで、組織へのアミロイド沈着を阻止できる可能性が示唆された。「今後はATTRアミロイドーシスの早期発見や治療法の開発へと研究が発展することが期待される」と、研究グループは述べている。
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