P1試験、2019年3月から実施
京都大学iPS細胞研究所(CiRA)は4月15日、成人の筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者を対象にボスチニブの有効性および安全性を評価することを目的とした第2相医師主導治験を開始したと発表した。同治験は、CiRAの井上治久教授、徳島大学脳神経内科の和泉唯信教授、京都大学医学部附属病院脳神経内科の髙橋良輔教授、江川斉宏院内講師、北里大学病院脳神経内科の西山和利教授、永井真貴子診療准教授、鳥取大学医学部附属病院脳神経内科の花島律子教授、渡辺保裕准教授および奈良県立医科大学附属病院脳神経内科の杉江和馬教授の実施体制で開始した。
ALSは、運動神経細胞が変性して筋萎縮と筋力低下を来す進行性の疾患で、治療薬としてリルゾールやエダラボンが使用されている。しかし、それらの治療薬を用いてもALSは根本的治療が難しい疾患であり、さらなる治療薬の開発が求められている。
井上教授らは、ALS患者由来のiPS細胞を運動神経細胞へ分化させ、その細胞を用いて、すでに他の疾患で治療薬として用いられている物質を含むさまざまな種類の化合物の中から運動神経細胞の細胞死を抑えることができる化合物のスクリーニングを行った。その結果、細胞死を防ぐ物質としてボスチニブを同定し報告した。ボスチニブ(販売名:ボシュリフ(R)錠)は、慢性骨髄性白血病の治療薬として用いられている既承認薬であるが、ALSを適応症として日本および世界各国で承認されておらず、ALSに対する有効性、安全性ならびに適切な用量は確立していない。
研究グループは、2019年3月からALS患者を対象としたボスチニブ第1相医師主導治験を実施し、ボスチニブの安全性と忍容性を評価し、探索的に有効性を評価してきた。
25例対象、24週間投与時の有効性および安全性を評価
第2相医師主導治験は、多施設共同非盲検試験。20歳以上75歳以下(同意取得時)のALS患者25例の対象にボスチニブの24週間投与時の有効性および安全性を探索的に評価することを目的に実施される。外部対照(過去のALSの臨床試験データやJaCALSのデータ)と比較する。同意取得後、一次登録の基準を満たしていることが確認できた場合、12週間の観察を行い、二次登録の基準を満たした患者のみボスチニブの投与(1日1回、24週間)が行われる。京都大学医学部附属病院、北里大学病院、鳥取大学医学部附属病院、奈良県立医科大学附属病院等の7施設で実施される予定。
適格基準「発症後2年以内」「ALSFRS-R1~4点低下」など
適格基準は、一次登録時において発症後2年以内、観察期間中にALSFRS-Rの合計点数が1~4点低下した患者など。除外基準は、気管切開を施行されている患者、一次登録時および二次登録時の%FVCが80%未満の患者、一次登録前4週間以内にエダラボンを使用した患者、一次登録時にエダラボンを使用した患者、観察期間開始後にエダラボンの使用を開始した患者、球麻痺型のALS患者などである。
なお、同試験は、多施設共同ALS患者の前向きコホートであるJapanese Consortium forAmyotrophic Lateral Sclerosis research(JaCALS)(愛知医科大学祖父江元学長、中央事務局熱田直樹特命准教授)と連携して実施される。
▼関連リンク
・京都大学iPS細胞研究所(CiRA)ニュース