12日に首相官邸で開催された「新しい資本主義実現会議」において、スタートアップの育成などコロナ後に向けた経済システムの再構築について議論。スタートアップ育成に向け、官民の役割分担を行った上で5カ年計画を策定し、実行のための司令塔機能を明確化する方向で固まった。
論点案では、VCからスタートアップに対する投資を拡大する方法として、「海外VCの誘致も含め、VCへの公的資本の投資拡大、VCと協調する支援の拡大とそのための体制整備が必要」とし、「2000兆円に及ぶ日本の個人金融資産がスタートアップの育成に循環すると共に、GPIF等の長期運用資金がVCやスタートアップなどに循環する流れを構築すべきではないか」と提案した。
医薬品の研究開発は、必要な資金が大規模で事業化まで時間を要する。新薬開発ではシーズ探索から非臨床試験、臨床試験、承認申請までに多くの時間とコストがかかり、バイオベンチャーに対するVCの投資額は増えているが、バイオベンチャーの新薬創出に結びついていない。
米国と比較すると、日本は民間VCの投資規模が小さく、運用期間が10年であることから、研究開発に取り組む創薬ベンチャーやアカデミアの成長を支えられないのが課題だ。2021年策定した「医薬品産業ビジョン2021」でも、VCによる外部資金をベンチャー企業に呼び込む必要性が言及されている。
会議で岸田文雄首相は、「神戸で創薬やバイオのスタートアップ経営者の方々と会ったが、資金調達の困難さを訴える声が印象的であり、大胆な支援を行っていく必要性を実感した」と語り、資金面の対応が重要との考えを示した。
経産省は、優良なVCの目利き力から革新的創薬に結びつけるため、「創薬ベンチャーエコシステム事業」を開始。日本医療研究開発機構(AMED)の認定を受けたVCによる出資を要件に、創薬ベンチャーが実施する前臨床・第I相、第II相段階の医薬品開発を支援するもので、2021年度補正予算として500億円を計上している。現在、AMEDがVCの公募を行っている。
今後、研究開発型スタートアップに大規模・長期の成長資金を供給するための具体的方策を検討していく方針である。