厚生労働省は、今年度の予算で「成育医療分野における薬物療法等にかかる連携体制構築推進事業」を実施しており、千葉県薬は採択事業者の一つ。これまで会員薬剤師向けに在宅医療に関する研修会を実施していたが、高齢者の在宅医療が中心で、小児在宅に関与する薬剤師の少なさが課題となっていた。
そこで、1月に会員向けにウェブセミナーを開催した。小児・新生児医療を専門とした医師や看護師、実際に小児在宅医療を経験している薬剤師、医療的ケア児の退院時に受け入れ先薬局を探す退院支援のコーディネーターが講演し、100人強の会員薬剤師が参加した。
千葉県内の小児専門病院は限られ、県内から疾患を抱える子供が治療を求めて入院しても、退院後は地域で小児患者を診る医療提供体制が必要になる。コーディネーターからは、「何軒も当たってみてようやく薬局が見つかる」と退院後の受け皿がないことが問題提起された。
千葉県薬は、小児在宅に関心が高い薬剤師を増やすため、今年度も継続して研修を実施していく方針。研修内容も入門編のみならず、疾患や無菌製剤が必要な小児へのケアなどを学べる専門編と拡充し、薬剤師のスキル向上を支援する。
眞鍋知史副会長は、「研修を受けた薬剤師をリスト化して、公表は難しくてもコーディネーターから薬剤師会に問い合わせがあった時に薬局や薬剤師を紹介したり、小児在宅に興味を持った薬剤師が勉強会などで集える場を作っていきたい」と話す。
また、医療的ケア児の医療提供体制で地域で薬局間が連携する必要性にも言及。子供の状況に応じて必要な設備や器具などが異なるため、高齢者用の在宅医療設備でどこまで対応できるかを課題に挙げる。無菌製剤が必要な患者の場合は、「地域の薬局間で無菌室など医療インフラを融通、共有できる体制が必要ではないか」と提言する。
島田恭光常務理事は、「参加できる薬剤師がいたとしても、薬局自体が賛同できるかが重要。参加薬局を増やしていかないといけない」と話す。
千葉県薬では、在宅医療の参加率が低い地域について原因を分析する取り組みを開始しており、その結果を通じて小児在宅医療に協力する薬局の裾野拡大に向けたアプローチに結びつける。
松戸市薬剤師会と連携した研究事業も行っている。薬局薬剤師が在宅訪問し、患児の保護者に薬剤の管理などについて質問を行い、現状や治療内容を薬学的に評価した内容を医師や訪問看護・施設等の関連職種と情報共有する。
薬剤師介入による情報共有で在宅移行支援のエビデンスを作り、一人でも多くの薬剤師の参画を促していく。