■厚労調査事業で報告書
医療用医薬品の川下流通を担う医薬品卸や保険薬局など62社を対象に取引先が持ちかけてくる価格交渉のタイプを聞いたところ、医薬品卸の約95%が「前年度の全体での値引率を基準に交渉されることが多い」と回答したことが、厚生労働行政推進調査事業「薬価制度抜本改革に係る医薬品開発環境及び流通環境の実態調査研究」(分担研究者:中央大学商学部三浦俊彦教授)の調査で分かった。単品単価交渉を困難にしている理由も「取引先が総価での交渉でしか応じないため」が約9割を占め、価格交渉で売り手よりも買い手が強い実態が改めて浮かび上がった。
同調査は保険薬局21社、医薬品卸売業45社、ジェネリック販社67社の計133社を対象に、2021年11~12月にかけてオンラインで聞き取りを行い、62社から回答を得た。
取引先が持ちかけてくる価格交渉についてどれくらいの頻度で行われているかを卸に聞いたところ、「前年度の全体での値引率を基準に交渉される」とのケースが「非常に多い」と回答したのは45.7%と半数弱を占め、「多い」「やや多い」を含むと94.2%に上った。次いで、「前年度の単品ごとの値引率を基準にした交渉」「他の契約単価(全国一律のベンチマークや他の施設の契約単価など)を基準にした交渉」が続き、「単品単価」は「非常に多い」の2.9%を含む37.2%にとどまった。
保険薬局が「卸から前年度の全体での値引率を基準に交渉される」頻度を聞いたところ、「非常に多い」は6.7%と少なく、「多い」「やや多い」を含めても40%だった。
流通改善ガイドラインで重要なテーマとなる「単品単価交渉を困難にしている理由」を卸、保険薬局に聞いた。卸では「取引先が総価での交渉でしか応じないため」がトップ回答で、「非常に当てはまる」が42.9%、「当てはまる」が34.3%、「やや当てはまる」が14.3%と9割が保険薬局の対応を原因に挙げた。
一方、保険薬局で最も多く挙がった回答は「1品目ずつの単価を設定するのに労力がかかる」で、「非常に当てはまる」が33.3%を占め、買い手側として単品単価取引を好まない傾向が示された。
納入価の契約について年間契約を難しくしている理由を卸に聞いたところ、「取引先の要請」が「非常に当てはまる」74.3%、「当てはまる」「やや当てはまる」含めると97.1%を占めた。それに対し、保険薬局は「取引先の要請」よりも「一度妥結しても年度途中で改めて交渉機会を確保したいため」「これまでの商慣習のため」を年間契約を難しくさせる理由に挙げた。