■現場薬剤師から悲痛な声
相次ぐ医療用医薬品の出荷停止や調整を受け、薬局や病院の薬剤師ら医療従事者の約8割が在庫品目の選定基準を変更したことが、「医療用医薬品供給状況データベース」(DSJP)の運営者が実施したアンケート調査で明らかになった。薬剤師などDSJPの利用者を対象に実施したもので、約半数が選定基準として安定供給を最も重視すると回答した。臨床現場からは、「出荷調整の影響で患者への説明が大変。現場は未曾有の混乱をしている」「いつもの患者に薬を用意できず他薬局を紹介したことが辛かった」など悲痛な声が上がっている。
3月末まで約2週間受け付けたアンケートに793人が応じた。回答者のうち薬局薬剤師は68.2%、病院薬剤師は10.7%を占め、薬剤師を中心に医療従事者が臨床現場の現況を回答した。
「在庫品目の選定基準は出荷調整になる前と後で変化したか」を聞くと、81.3%が「ある」と回答。「在庫品目の選定基準として最も重要なもの」を選んでもらった結果、「供給の安定性」(48.7%)、「所属組織の推奨品目」(26.1%)、「製剤的特徴」(11.0%)の順で回答が多かった。
回答者からは「以前は外観や添加物、薬価差益等を総合的に検討していたが、現在は安定供給を一番に選定している」「推奨品や先発、後発を問わず、とにかく納品できる企業の医薬品を入れるようになった」「出荷調整頻度が高い製薬企業はなるべく避けるようになった」などの声が上がり、以前に比べ安定供給を重視する姿勢が鮮明になった。
「製薬企業の対応に不満はあるか」との問いに対しては、72.8%が「ある」と回答。出荷停止や出荷調整に関する正確で迅速な情報提供を求める声が大半を占めた。薬局薬剤師の有志がボランティアで出荷調整等の情報を提供しているDSJPと製薬企業の公式な連携を半数以上の回答者が望んでいた。
出荷調整や出荷停止による具体的な影響について聞くと、多数の回答者から悲痛な声が寄せられた。
特に患者対応に苦慮する声が多かった。「患者への説明が大変。丁寧に話しても理解できない方も多く、現場は未曾有の混乱をしている」「患者に事情を説明するが、『薬局なのに薬がないなんてやる気がないのか』と言った意見を多数受けた」「いつも来局してくれていた患者の薬を用意できず、他の薬局を紹介しなければならなかったことが一番辛かった」などの声が聞かれた。
医師の理解不足に直面するケースも少なくないようだ。「医師へ処方変更を依頼するも、情報が伝わっていないのか簡単に断られる」「処方元の医師に供給不安定で入らない旨を伝えても『あるところにはあるんだから入らないわけがない』と取り合ってくれない」などの声があった。
薬剤師の業務にも大きな影響が出ているという。「医薬品の手配や卸との調整に時間を取られ、患者対応業務が圧迫される」「どれだけ頑張ってもマイナスをゼロにする作業でしかなく、金銭的な評価もない。精神的にも肉体的にも辛い思いをしている」との声が上がった。
薬局経営の面でも影響は小さくない。「面で処方箋を持ち込んでいただいても、新規に納入してもらえないため調剤できず、信用を失っている」「後発品への置き換え率が低下し、調剤報酬の加算が算定不可となった」「欠品を避けるため在庫が過剰になり、薬価改定前だが思うように在庫を減らせなかった」などと嘆く声があった。
このほか、「現在に至っても後発品の使用を推進してきた国は、国民に対して沈黙を貫くだけ。結局のところ、後発品の供給不足の尻拭いは医療従事者と患者がさせられている」との厳しい指摘もあった。