医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 地下鉄騒音下での音楽聴取、難聴予防にノイズキャンセリング機能が有用-順大ほか

地下鉄騒音下での音楽聴取、難聴予防にノイズキャンセリング機能が有用-順大ほか

読了時間:約 2分54秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2022年04月05日 AM11:30

雑音下、イヤホンによる安全な音楽聴取の対策は?

順天堂大学は3月30日、各種イヤホン装着時の音楽聴取の実験から、地下鉄の騒音環境下での音楽聴取は難聴リスクを高め、ノイズキャンセリング機能によって難聴リスクが回避できることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センター耳鼻咽喉科の池田勝久特任教授、電気通信大学大学院情報理工学研究科の小池卓二教授、順天堂大学医学部耳鼻咽喉科学講座・リハビリテーション室の保科卓成言語聴覚士らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Audiology & Otology」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

携帯型音楽プレーヤーやスマートフォンの普及により、現在、多くの人が手軽に音楽を聴くことができるようになっている。一方、世界保健機構(WHO)の2010年の報告によれば、中~高所得国の10歳代の約半数が不適切な音量で携帯音楽プレーヤーを使用。2015年には世界で11億人の若者が聴取器機の不適切な使用によって難聴の危険にさらされていると報告し、これらの娯楽性難聴に警鐘を鳴らしてきた。また、米国の国民健康栄養調査では、1994~2006年の間に10歳代の難聴は3.5%~5.3%に増加しており、最近の報告では9~11歳の小児の15%程度に難聴を認めるなど、小児や青少年などの若者世代に高い率で難聴が生じている。

耳の感覚細胞は、定期的または長期に及んで大きな音に晒されることにより徐々に傷つき、永久的な聴力損失につながるとされている。また、携帯型音楽プレーヤーやスマートフォンで強大音量を聴取する習慣が5年以上継続すると、一時的または永続的な高周波域の難聴になることも示されている。一方、多くの研究によって、安全な音響の上限は85dBで8時間までとされているが、現在使用されている携帯型音楽プレーヤーやスマートフォンで出力可能な最大音量は安全域を越えている。これらの音楽デバイスが静寂な環境で使用された場合は、音量は一般的には安全域とされているが、地下鉄内など雑音が生じている中では音量を増大させる傾向にある。しかし、雑音下でのイヤホンによる安全な音楽聴取の対策はこれまで明らかになっていなかった。

聴力正常な成人23人対象実験、4種類のイヤホンを用いて

今回、研究グループは、聴力が正常な成人23人を対象に実験を実施。4種類のイヤホン(A:耳置き型、B:ヘッドホン、C:インサート型、D:(NC)機能付きインサート型)を用いてポップスとクラシック音楽を聴取し、一番聞き心地の良い音量(最適リスニングレベル)を任意で調整してもらった。静寂な環境条件下と地下鉄内で録音した環境騒音(80dB)下で、それぞれの音楽の最適リスニングレベルを計測した。

耳置き型・ヘッドホン、危険な音量85dB以上となる場合も

研究の結果、地下鉄の背景雑音下で最適リスニングレベルは、A、B、Cのイヤホンでは静寂下に比べて増加。AとBのイヤホンではCとDに比べて増加し、AとBでは危険な音量である85dB以上となる場合があった。NC機能のあるインサート型イヤホン(D)では、安全音量の75dB以下だった。

静寂下に比べて、背景雑音下での最適リスニングレベルのクラシック音楽がDよりもCで増加した以外は、ポップスとクラシックの違いは認めなかったという。

また、騒音下の最適リスニングレベルの増加量は、外耳道内での環境雑音圧の減少と相関があった。

以上のことから、騒音環境下では、安全に音楽聴取をするためにNC機能のあるイヤホンの使用が有効であることが明らかになったとしている。

地下鉄など騒音環境下、通常イヤホンでの音楽聴取は危険な音量に達する可能性

今回の研究により、地下鉄などの騒音環境下では、通常のイヤホンでの音楽聴取は危険な音量に達する可能性があることが明らかとなった。研究グループは、難聴予防の面からNC機能の使用が推奨されるとしている。また、最適リスニングレベルには個人差があるため、聴取している音量をモニターして危険な音量に到達した場合に警告を発する仕組みの開発も望まれる。その他、定期的に聴力検査を施行して早期に一過性の難聴を発見するとともに、永続的な難聴への進行を予防することも重要だ。

難聴に伴う社会問題として、難聴が認知症の最も重要な危険因子であることが知られている。加齢性難聴に娯楽性難聴が加わり、難聴が重症化することによって認知症の危険が高まることも危惧されるという。超高齢社会に達しているわが国での重要な問題である認知症の予防の面からも娯楽性難聴を注視することが求められる、と研究グループは述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • EBV感染、CAEBV対象ルキソリチニブの医師主導治験で22%完全奏効-科学大ほか
  • 若年層のHTLV-1性感染症例、短い潜伏期間で眼疾患発症-科学大ほか
  • ロボット手術による直腸がん手術、射精・性交機能に対し有益と判明-横浜市大
  • 前立腺がん、治療決定時SDMが患者の治療後「後悔」低減に関連-北大
  • 糖尿病管理に有効な「唾液グリコアルブミン検査法」を確立-東大病院ほか