薬剤師法では、医師が自己の処方箋により自ら調剤する時を除き、看護師など薬剤師以外の者による調剤を禁止している。離島部を持つ大分県津久見市は、今年度の地方分権改革で、へき地の遠隔診療時における調剤制限緩和を提案。昨年11月の地方分権改革有識者会議・提案募集検討専門部会合同会議で「2021年度中に検討し、結論を得る」との対応方針案が了承され、昨年12月に閣議決定されていた。
通知では、荒天で医師や薬剤師が渡航できないことで不在となり、本土にいる診療所医師が患者に遠隔でオンライン診療を行った場合の調剤については、一定の条件を満たせば、看護師が患者に薬剤を渡すことは差し支えないとした。
具体的には、医師または薬剤師が離島診療所の看護師に対し、処方箋に記載された医薬品の必要量を取り揃えるよう伝え、映像・音声の送受信による方法で取り揃えの状況や、取り揃えられた薬剤が処方内容と相違がないかなどを確認することを挙げた。
看護師が取り揃え、患者に受け渡しが可能な薬剤については、離島の診療所内で適切に保管・管理され、PTPシートで包装されたままの医薬品に限定した。
津久見市離島部である保戸島の診療所には、診療所の院長や看護師などが週4日本土から定期船で通い、島在住の看護師を含めた体制で診療を行っていた。20年10月からは荒天等において、医師が渡島できない時の診療体制を確保するため、本土の津久見市内の病院からオンライン診療ができるよう診療所で運用を開始した。
しかし、医師が本土の病院からオンライン診療を実施することになるため、診療所内に医師が不在となり、薬剤師も常駐しておらず、診療所内にある薬剤を患者に提供できない事例が発生していた。
厚労省は今回の規制緩和について、「薬剤師または医師が調剤した医薬品を供給できる体制整備が前提」と強調し、平時から薬剤師の確保など医薬品提供体制を構築するよう求めている。大分県薬剤師会は2月から、保戸島に常駐する薬剤師の募集を開始。九州管内で募集を行っているが、現段階で1人も集まっておらず、離島で薬剤師を確保する厳しい現状に直面している。
県薬事務局は、「島に薬剤師が常駐できるよう宿泊場所などを整備したが苦戦している。薬剤師の常駐は難しくても派遣の方法で対応できないか検討したい」とコメントした。今回の規制緩和に対する受け止めについては、「医師や薬剤師もいないへき地での医薬品提供を考える重要な機会となっている。服薬指導や健康相談などをどう行っていくかも考えていく必要がある」としている。