JMDCを用いて有病率と罹患率を推定、患者特性と使用薬剤も評価
日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社は3月29日、国内レセプトデータなどのリアルワールドデータを活用して、日本の全身性強皮症および全身性強皮症に伴う間質性肺疾患の罹患率と有病率を推定した結果を発表した。研究成果は、「Advances in Therapy」に掲載されている。
全身性強皮症(Systemic sclerosis:SSc)は、免疫異常、線維化、血管障害を基本病態とした疾患で、厚生労働省が定める難病に指定されている。皮膚が硬くなる変化を代表的な症状とする疾患だが、皮膚以外の消化管、肺、心臓、腎臓など全身の臓器にも症状が現れる。間質性肺疾患(Interstitial lung disease:ILD)は、SScの主な死亡原因であり、患者の生命予後に大きく影響する。また、臨床症状が複雑で多岐にわたることから疫学研究が困難なため、近年、日本では、SScとSSc-ILDの有病率および罹患率に関して公表されたデータはなかった。
今回の研究では、健康保険レセプトデータベース(JMDC)を用いて、SScとSSc-ILDの有病率および罹患率を推定。さらに、病院診療レセプトデータベース(MDV)とJMDCを用いて、SScおよびSSc-ILDの患者特性並びに使用薬剤を評価した。研究期間は2015年9月1日~2019年8月31日まで。登録対象は、SScまたはSSc-ILDに関する診療報酬請求が1回以上あり、かつSScの診断に関する最初の診療報酬請求の前に連続12か月間の登録歴がある例とした。
日本の有病率と罹患率は、グローバルデータと同程度
研究の結果、SScの罹患率は6.6(10万人・年あたり)、有病率は37.0(10万人あたり)、SSc-ILDの罹患率は1.9(10万人・年あたり)、有病率は13.9(10万人あたり)と、これまで公表されているグローバルデータと同程度だった。なお、JMDCデータベースには高齢者集団は少数しか含まれていないため、結果の解釈には注意が必要だとしている。
各免疫抑制薬の使用割合15%未満
SScおよびSSc-ILD患者の使用薬剤では、各免疫抑制薬の使用割合が15%未満。SScおよびSSc-ILDに対して、十分な治療が行われていない実態が明らかとなった。日本では、依然として治療に対するアンメットニーズが高いことが確認されたとしている。
GL推奨治療が広く普及していない現状、改善の必要性
同論文の筆頭著者である、日本医科大学大学院医学研究科アレルギー膠原病内科学分野の桑名正隆大学院教授は、「SScおよびSSc-ILDは、希少疾患であるがゆえに有病率および罹患率に関する公表された最近の国内データがなかった。今回の研究を通じて得られた知見が、今後の医療行政、研究開発に役立つことが期待される。また、ガイドラインで推奨されている治療が広く普及していない現状が明らかとなり、それを改善する取り組みの必要性が示された」と、述べている。
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・日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社 プレスリリース