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高齢者で「奥歯の噛み合わせがない」場合、高血圧リスクは1.7倍上昇-兵庫医大ほか

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2022年03月30日 AM11:00

口の健康は食事内容と高血圧との関係性にどう関連するか

兵庫医科大学は3月24日、兵庫県丹波篠山圏域在住の高齢者を対象にコホート研究を行い、高齢者における高血圧症と口腔機能との関連を食習慣から明らかにしたと発表した。この研究は、同大総合診療内科学の新村健主任教授、歯科口腔外科学の長谷川陽子非常勤講師らと、新潟大学大学院医歯学総合研究科、丹波篠山市との共同研究によるもの。研究成果は、「Nutrients」に掲載されている。

口は、栄養を取り込むための重要な器官であり、さまざまな疾病の発症に関わっているといわれている。加齢や疾患により、口腔や全身状態が変化すると、食品の選択や食習慣が変化する。2018年の日本の国民健康栄養調査によると、60歳以上の約25%の人が咀嚼機能の低下を訴え、さまざまな食べ物を噛むことができない状態である。また歯を失った人は、好んで柔らかくて噛みやすい食べ物を選び、食物繊維が豊富で栄養価の高い食べ物を避ける傾向にある。咀嚼は、「食べ物を細かく砕いて飲み込む」という消化プロセスの最初のステップであり、特に高齢者では健康維持に欠かせない栄養吸収をより可能にするものである。

高血圧は、非感染性疾患の中で日本人の主要な死因の1つといわれている。75歳以上の日本人の約70%が高血圧とされ、高血圧の発症にはさまざまな生活習慣が関係している。歯科口腔外科の領域では、歯周病、歯の本数が高血圧と関連することが報告されており、日本の吹田研究(大阪府吹田市の一般住民を対象としたコホート研究)では、高齢者の高血圧と口の働きとの間に関連があることが報告されている。

食事摂取内容と高血圧との関係は広く知られているが、「口の健康が食事摂取内容と高血圧との関係性にどのような役割を果たすか」についての研究はほとんどない。そこで、研究グループは、「血圧・食事摂取内容」と「口の働き」との関連性を調査し、解析を行った。

「臼歯部咬合支持域の喪失」を認めた高齢者、高血圧のオッズ比1.72と有意に高い

兵庫県丹波篠山市内で行われたコホート研究「Frail elderly study in the Tamba Sasayama-Area(FESTA)」の一部として研究を実施。対象者は、2016年4月~2019年12月にかけて、医科歯科合同調査研究に自発的に参加し、書面によるインフォームドコンセントを提出した65歳以上の自立した地域在住高齢者894人だった。

高血圧は日本高血圧学会のガイドラインに基づき分類。口腔内の状態は、残存歯数、咬合力(噛む力)、後方咬合支持(奥歯の噛み合わせ)、咀嚼能力、口腔内水分量、口腔内細菌数により評価した。食事摂取量は、簡易型自記式食事歴法質問票(BDQH)を用いて評価。運動習慣、喫煙習慣、糖尿病、脂質異常症、慢性腎臓病、心血管疾患、脳卒中などの健康情報は、参加者のアンケート調査から収集した。

解析の結果、高血圧と関連がある患者背景因子として、「年齢」「body mass index [体重〈kg〉÷(身長〈m〉の2乗)で算出]」「臼歯部咬合支持域の状態」「摂取食品中のナトリウム/カリウム比」が抽出された。特に臼歯部咬合支持域の喪失を認めた高齢者については、高血圧のオッズ比が1.72と有意に高いことが明らかになった。

どのような作用により、高血圧に対して予防的役割を担うかの解明を目指す

今回、高齢者の血圧変化には口の働きが関連し、「食品をかみ砕く能力が高いことは、高血圧に対して予防的な食生活を維持するうえで極めて重要である」可能性を示した。特に奥歯の噛み合わせがない場合、「高血圧のリスクを1.7倍高める」というエビデンスが得られた。一方、今回は横断研究のため、「高齢者の高血圧」「口の働き」「」との因果関係は明らかではないとしている。

「今後は、高齢者の血圧の変化を経時的に追跡していくことで、口の働きを良い状態に保つことが、どのような作用により、高血圧に対しての予防的な役割を担っているのかを詳しく解明していきたい」と、研究グループは述べている。

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