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DMDエクソン44スキップの核酸医薬、6例に医師主導治験実施で経過良好-NCNPほか

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2022年03月29日 AM11:15

エクソン53スキップ薬は承認済み、別のエクソン標的薬の開発が喫緊の課題

国立精神・神経医療研究センターは3月17日、アンチセンス核酸医薬品であるデュシェンヌ型筋ジストロフィー(以下、DMD)治療薬()を用いた医師主導治験(First In Human試験)の成果について発表した。この治療薬は、同センターと日本新薬株式会社が共同研究として進めてきたもの。研究成果は、2022年3月13日~16日(米国時間)で開催のMuscular Dystrophy Associationカンファランスで発表された。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

DMDは、ジストロフィン遺伝子の変異が原因で、筋の細胞膜からジストロフィンタンパク質が失われ、徐々に筋力低下が進む難病で、男児に発症する。「エクソン・スキップ治療」は、アンチセンス核酸と呼ばれる短いDNA様の合成核酸を用いて、メッセンジャーRNA前駆体から成熟メッセンジャーRNAが作られる過程で、タンパク質に翻訳されるエクソン領域の一部を人為的に取り除く(スキップする)ことで、アミノ酸読み取り枠のずれを修正する(イン・フレーム化する)治療法。この結果、正常なジストロフィンに比べると、タンパク質の一部が短縮するものの、機能を保ったジストロフィンが発現して筋機能の改善が期待できる。

この治療でスキップの対象となるエクソンは患者の変異形式に応じて異なり、現在までに日本では、NCNPと日本新薬が共同で見出したNS-065/NCNP-01を有効成分としたエクソン53スキップ薬であるビルテプソ(R)点滴静注250mgが製造販売承認を取得しているが、エクソン53スキップ薬が適応にならない患者に対して、別のエクソンを標的とした薬剤の開発が喫緊の課題となっている。

世界初のエクソン44スキップ薬、6例の患者を対象に治験実施

今回の治験で用いられたNS-089/NCNP-02は、NCNPと日本新薬が共同で開発した世界初のエクソン44スキップ薬。モルフォリノ核酸が本来有する高い安全性に加えて、特許出願技術である新規高活性配列探索法を用いて開発した配列連結型のモルフォリノ核酸製剤であり、高いエクソン・スキップ活性を有している。これまでに得られた非臨床試験の結果からは、エクソン44スキップに応答する変異形式のDMD患者細胞における有効性が確認されており、病気の進行を抑えることが期待される。

今回の治験は、NCNP病院と鹿児島大学病院で6例のDMD患者を対象に行われ、主要評価項目である安全性の他、NS-089/NCNP-02投与後の薬物動態、ジストロフィンタンパク質の発現確認、運動機能評価等の有効性について検討が行われた。

正常の10~15%程度のジストロフィンタンパク質が回復、運動機能は維持・改善傾向

NS-089/NCNP-02の投与により、コホート1(40mg/kg投与群)では平均10.27%、コホート2(80mg/kg投与群)では平均15.79%のジストロフィンタンパク質の発現の回復が認められた。また、ノース・スター歩行能力評価スコアを含め、運動機能の維持又は改善傾向が示唆された。これらの結果から同剤は、DMDに対する治療効果が期待される。同治験を通じて、有害事象の発生による投与中止例はなかった。

日本新薬は、同治験の結果も踏まえ、臨床試験を引き継ぎ、上市に向けて次の治験の準備を進めている。なお、同治験に参加した6例は、日本新薬による継続投与試験に参加しており、さらに長い投与時の有効性、安全性についても検討を行う予定となっている。

研究代表者の青木吉嗣部長は、「モデル動物を用いた検討から、ヒトで正常の10~15%程度のジストロフィンタンパク質が回復すると、筋機能の改善を十分に期待できることが示唆される」とコメントしており、治験責任医師の小牧宏文TMCセンター長は、「世界で初めてヒトを対象に平均15%以上のジストロフィンタンパク質の発現回復に成功したこと、ならびに運動機能への有効性が十分に期待できる結果が得られたことは画期的だ」と、コメントしている。

同発表の末尾では、同治験に協力した患者・家族に対し、謝辞が述べられている。

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