■地域限定して試行へ
心房細動は不整脈の一種で、動悸や息切れを起こしたり、疲れやすさを感じたりする病気。症状が短時間で収まったり、自覚症状がないため気づきにくく、脳梗塞など重大な疾患につながる危険がある。心房細動の再発率は高く、抗凝固療法でリスクを約6割減少できるとされているものの、脳梗塞の発症前に抗凝固薬を内服していた心房細動患者は3割未満にとどまっていたとの報告がある。
2019年には「脳卒中・循環器病対策基本法」が施行され、医療従事者に対して循環器病の予防への貢献とサービス提供に努めることが明記された。同法に基づき策定された「循環器病対策推進基本計画」では、医師、薬剤師をはじめ多職種が連携して予防、重症化・再発予防などの総合的な取り組みを進めるよう求められている。
こうした社会的な背景を捉えて同協会は、多くの地域住民が訪れる薬局を活用し、脳梗塞の原因となる心房細動を早期に見つけ、日頃から定期的な心電図測定を行うことで脳血管疾患を予防する取り組みをスタートさせることにした。
同協会の管理者研修会を受講した薬剤師が、「健康応援スポット」の認証を受けた薬局で心電計付き血圧計を購入し、心電図測定サービスを開始できる。管理者研修会では、心房細動や関連疾患の理解から心電計付き血圧計の使用方法、測定結果の伝え方、受診勧奨モデルなどを習得でき、来局者にその場で測定するよう促す提案型コミュニケーションも取り入れている。
さらに、受診勧奨の手順書や心房細動のリスクが分かるチェックシート、啓発チラシなどの資材も提供。地域住民に早期発見の重要性を呼びかけると共に、測定結果の解釈が正しく伝わるよう細心の注意を払っている。受講後も同協会から継続的なサポートが受けられる。
具体的なサービスとしては、来局した患者の処方箋や薬歴から判断し、チラシを用いて声かけを実施。心房細動など疾患の説明を行った上で、チェックシートを用いてリスクを確認し、希望者に心電図を測定する流れとなる。
測定結果は人工知能(AI)が判断し、徐脈や頻脈、心房細動といった異常が発見された場合は、定期的に健康診断を受けるよう促したり、専門医への受診勧奨を行う。かかりつけ医がいる患者には、必要に応じて薬局薬剤師からトレーシングレポートで情報提供を行うなど、医師との連携にもつなげる。
当面は、地域限定で心電図測定サービスを開始する計画だ。心房細動の早期発見につながるエビデンスを積み重ねると共に、日本脳卒中協会とも連携して専門医に対する理解も深めていく。
ただ、日本では心電計付き血圧計の活用が初めてとなることから、継続的な取り組みが課題となる。同協会では、「脳卒中月間」の10月、「心房細動週間」のある3月を強化月間に指定し、薬局店頭で声かけしやすい環境づくりも積極的に行っていきたい考えだ。
同協会は「心房細動の早期発見は、薬局から受診勧奨しやすいモデルであり、専門医からも歓迎されている。最終的にはしっかりとアウトカムを出してきたい」としている。