スマホアプリ「アレルサーチ」利用者1万1,284人対象、花粉症に関する包括的なデータを収集・解析
順天堂大学は3月22日、スマートフォンアプリケーション(以下、スマホアプリ)「アレルサーチ(R)」によるクラウド型大規模臨床研究を実施した結果、スマホアプリから収集した個々人の花粉症患者の特徴、花粉症のある人の特徴や花粉症症状の強さと関連する特徴を明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学大学院医学研究科眼科学の猪俣武範准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Allergology International」オンライン版に掲載されている。
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花粉症は日本で約3000万人が罹患する、最も多いアレルギー疾患。現在も、患者数は増加し続けている。花粉症はアレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎など多様な病態を呈するとともに、その発症年齢、重症度、治療の有効度等は個々人によって大きく異なる。しかし、これまで複数の診療科における花粉症に対する診療連携は未だ達成されておらず、多様な花粉症の症状に対し、最適化された花粉症診療が進まないことが課題となっている。
花粉症の原因には、花粉以外にも大気汚染物質等の環境要因、食事・喫煙・運動等の生活習慣、家族歴・年齢などが無数に関連している。そのため、従来の疫学研究では、これらの特徴と花粉症との関連を十分に検証することができていなかった。
そこで、今回の研究では、Apple社のResearchKitを利用したiPhoneアプリ「アレルサーチ」を対象期間中(2018年2月1日〜2020年5月1日)にダウンロードし、同意を得た1万1,284人を対象に、アレルサーチを用いたクラウド型大規模臨床研究を通じて花粉症に関する包括的なデータを収集・解析。花粉症のある人の特徴や花粉症症状の強さと、関連する特徴を明らかにすることを目的とした。
花粉症の重症度は、各4点満点の5項目の鼻症状スコア、4項目の非鼻症状スコアを用いて36点満点で評価。また、アレルサーチによって収集した、年齢や性別といった基本情報や、既往歴、生活習慣、花粉症の有無といった情報と、花粉症のある人の特徴および花粉症症状の強さと関連する特徴を検証した。さらに、花粉症に対して行う予防行動について調査を実施。研究参加者の年齢は中央値34歳(四分位範囲23~46歳)で、56.4%が女性。居住地域は、東京が2,510人(22.2%)、神奈川1,070人(9.5%)、大阪957人(8.5%)。また、研究参加者1万1,284人のうち、80.1%(9,041人)に花粉症の既往があった。
花粉症症状の強さと関連する特徴、若年齢・女性・喫煙習慣など
まず、花粉症の人と非花粉症の人を比較した結果、若年齢・女性・アトピー性皮膚炎・ドライアイ・花粉症シーズン中のコンタクトレンズの装用中断・排便回数が多いこと・短い睡眠時間が、花粉症のある人の特徴であることが明らかになった。
花粉症症状の強さと関連する特徴の検証では、「若年齢・女性・呼吸器疾患・ドライアイ・トマトアレルギー・花粉症シーズン中のコンタクトレンズ装用中断・喫煙習慣・ペット飼育」が、花粉症の重症度と正の関連を示すことが明らかとなった。
花粉症に対する予防行動を行う割合は、マスクの使用が最も多く、次いで内服薬、点眼薬、点鼻薬、空気清浄機、洗顔剤の使用、メガネ・ゴーグル着用の順で多かった。
以上の結果より、従来の疫学調査では難しかった花粉症のある人の特徴や花粉症症状の強さと関連する特徴を明らかにすることができたとしている。
花粉症の症状管理・重症化抑制などが可能なスマホアプリ開発を目指す
今回の研究では、スマホアプリから収集した花粉症関連ビッグデータを検証し、花粉症のある人の特徴や花粉症症状の強さと関連する特徴の解明に成功した。この成果から、花粉症の特徴や症状のさらなる多様性の理解の推進が期待されるという。
研究グループは、さらに研究を進めることで、花粉症の症状管理、重症化抑制や予防・治療が可能なスマホアプリの開発を目指す。
なお、今回の研究の限界として、スマホアプリを使った研究のため、研究参加者の偏りによる選択バイアス、質問紙票に対する回答における想起バイアスなどが生じる可能性があるとしている。
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