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高齢者の精神的健康維持に対面接触の影響「大」、非対面でも有効-都長寿研

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2022年03月24日 AM11:30

社会的接触と健康関連問題の関係を、世代間で比較検討

東京都健康長寿医療センターは3月18日、若年・中年・高齢者における「」と「非対面接触」が健康度自己評価および精神的健康状態の悪化に及ぼす影響を調査した結果を発表した。この研究は、同センター研究所社会参加と地域保健研究チームの藤原佳典研究部長らの研究グループによるもの。研究成果は、「International Journal of Environmental Research and Public Health」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

社会的孤立(社会的接触の欠如した状態)が一般的な健康および不安感や抑うつなどの精神的な健康に関連しており、成人における死亡原因の一つであることが多くの研究で明らかになっている。社会的孤立に関する研究はいくつか行われているが、健康問題に関連する年齢別のエビデンスはまだ十分ではない。また、ほとんどの先行研究の参加者は高齢者であり、青壮年世代との比較に焦点を当てた研究は希少である。

日本では2021年2月、英国に次いで2番目となる「・孤立対策担当大臣」が設置された。社会的孤立に対処する戦略を提案するためには、社会的接触と健康関連問題の関係について、ある世代に特徴的なのか、共通性はあるのか等、三世代を調査し比較検討することが重要だ。

首都圏在住の25~85歳対象、接触方法、頻度などを調査

研究では、首都圏在住の25歳以上85歳未満を対象とした2年間の縦断データを使用。2016年初回調査(T1)と2018年第二回調査(T2)共に回答した1,751人のデータを分析した。研究のアウトカムは、健康関連因子として、WHO-5精神的健康度(World Health Organization-Five Well-Being Index)(得点範囲:0~25点、13点未満を不良)および主観的健康感(自己評価による健康状態:良好vs.不良)を用いて測定した。

社会的接触は、別居の家族・親戚・友人・隣人(すなわち、同居家族以外)と(A)FFC(直接会う対面接触)頻度、(B)NFFC(電話・メール・手紙などによる非対面接触)の頻度について尋ね、同居家族以外の誰かと週1回以上接触しているか否かで、「非対面接触の有無に拘わらず対面接触あり」(FFC)グループ、「非対面接触のみ」(NFFC)グループ、「接触なし(即ち孤立)」(NC)グループに分類し、高齢群(65~84歳)、中年群(50~64歳)、青壮年群(25~49歳)別に比較検討した。

対面接触は、非対面接触のみより精神健康状態の悪化リスクを低減させる可能性

人口統計学的変数(年齢、性別、教育年数、生活形態、居住年数、経済的状況)を調整した上で、社会的接触の精神的健康度および主観的健康感への影響が年齢層別に異なるかを統計解析した結果、以下の関係性が確認された。

高齢群は、中年群、青壮年群に比べ孤立者は統計学的に少なかった(26.1%、37.3%、37.9%)。NC(孤立)グループと比較した2年後の精神健康状態の低下リスクについて、高齢群のNFFCグループでは5割弱(オッズ比(OR)=0.45, 95%CI:0.21-0.97)、FFCグループでは3割弱(OR=0.27, 95%CI:0.14-0.51)にまで低減され、青壮年群でもFFC並びにNFFCグループ共に、5割弱に(OR=0.47, 95%CI:0.25-0.88、OR=0.42, 95%CI:0.23-0.74)に低減された。上記オッズ比より、非対面接触のみの場合よりも、対面接触の方が、精神健康状態の悪化のリスクを低減させる可能性があることが明らかになった。

また、中年群では、NC(孤立)グループと比較したFFCグループは、交絡因子(属性や生活背景・習慣等)で調整後も、2年後の主観的健康感の低下リスクが3割弱に低減できた(OR=0.28, 95%CI:0.10-0.80)。

これらの結果から、日頃、同居家族以外との接触がない場合(=孤立)と比べて、1)精神的健康状態の悪化を抑制するためには高齢者のみならず青壮年者においても、対面接触(直接、会うこと)および非対面接触いずれも有効であること、2)非対面接触のみの場合よりも、対面接触の方が、その好影響は大きいこと、3)中年者では、対面接触は精神的健康状態についてではなく主観的健康感の維持・向上に有意に影響することが明らかになった。

長引くコロナ禍、LINE等のオンラインコミュニケーションツールの活用を

これまで、高齢者における社会的孤立(社会的接触の欠如した状態)と健康の関連を分析した研究は、多数報告されている。しかし、非対面接触は対面接触を代替できるか検討した追跡研究はいまだ少ない状況だ。さらに、世代ごとに比較した研究は今回の研究以外に見られないという。

長引くコロナ禍の影響で対面接触が制限されることによる、心身の健康への影響が危惧される。社会的孤立状態は、高齢者のみならず、青壮年世代においても精神的健康に悪影響を及ぼす。非対面接触によってもその悪影響は緩和されたが、高齢者では対面接触が特に有効であり、青壮年者は、対面、非対面とも同程度に有効だった。

「近年、LINEやZoomなどのオンラインコミュニケーションツールが普及する中で、高齢者はコロナ終息後も外出が困難となる場合を想定し、早くから上記のツールを活用することが推奨される。青壮年者は、対面、非対面接触とも適宜、活用することが重要」と、研究グループは述べている。

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