オンライン医療相談などの介入は発症抑制に影響するか
国立成育医療研究センターは3月16日、小児科に特化したオンライン医療相談「小児科オンライン」を用いて、生後4か月時点の子どものアトピー性皮膚炎の有症率にどのような影響を与えるのかを調べ、オンライン医療相談などを提供した介入群では、提供しない対照群と比べて有症率が13%低くなったことがわかったと発表した。この研究は、同センター政策科学研究部の安藤友久共同研究員、竹原健二部長らと、株式会社Kids Publicが共同で実施したもの。研究成果は、「JMIR Pediatrics and Parenting」に掲載されている。
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現代社会においては、半数以上の乳児が何らかの皮膚トラブルを抱えるといわれている。中でもアトピー性皮膚炎は、その後のアレルギー疾患(食物アレルギーや喘息など)の発症にも関わっているといわれており、乳児期の予防や治療がとても重要とされている。産後は保護者にとって不安や心配が尽きない時期であり、子どものことで気になることがあっても、受診した方がよいのか、誰に相談したらいいのか、判断がつきにくいことも少なくない。
研究グループは、2017年11月1日~2018年5月31日の間に、横浜市栄区に出生連絡票を提出した母子を対象に、オンライン医療相談などを提供する介入群と、提供しない対照群にランダムに振り分け、生後4か月時点の子どものアトピー性皮膚炎の有症率にどのような影響を与えるのかを調べる、栄区母子小児医療相談研究:SIMPLE Studyを実施した。
オンライン医療相談介入群の有症率は対照群より13%低い
対象者数は介入群140人、対照群138人。介入群には、出生連絡票提出後から生後4か月まで、オンライン医療相談「小児科オンライン」の無料提供とメールマガジンを3日ごとに配信した。「小児科オンライン」は、Kids Publicが運営するオンライン医療相談サービスで、平日18時~22時に、子育てにおける疑問や不安などを小児科医に直接相談可能なサービスを、電話やLINEを使って提供している。
アトピー性皮膚炎の有無は、横浜市栄区役所で実施された4か月健診の際に、同一の1人の小児科医がどちらの群に属しているかはわからない状態で子どもの皮膚の状態を診察し、United Kingdom Working Party(UKWP)criteriaに基づいて判断した。
最終的な解析対象は介入群138人、対照群127人。介入群では、対照群に比べ、生後4か月健診時点でのアトピー性皮膚炎の有症率が13%低くなったことがわかった(20% vs. 33%, P=0.02; relative risk ratio, 0.709 [95% CI 0.519-0.969])。
発症予防や早期発見などにおいてもICTの活用が期待される
研究成果は、オンライン医療相談で小児科医から直接受ける自宅でのスキンケア方法についてのアドバイス、またメールマガジンでスキンケアの重要性などの情報を得られる環境が、アトピー性皮膚炎を抑えることに有効であることを示唆している。また、今回の研究は、「ランダム化比較試験」を用いており、介入による効果を示唆することができたとしている。
「今後、さらなる研究や検証を進めることで、アトピー性皮膚炎だけではなく、さまざまな疾患の発症予防や早期発見などにおいてもICTの活用が期待される」と、研究グループは述べている。
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・国立成育医療研究センター プレスリリース