口唇口蓋裂児の成長発育への影響については明らかにされていなかった
東北大学は3月15日、生後6か月~36か月の間の口唇口蓋裂を伴う子どもの精神運動発達は、先天異常を伴わない子どもと比較して遅れる傾向があったが、3歳時点までにさまざまな機能のキャッチアップ(追いつき)が認められたと発表した。この研究は、同大病院の土谷忍助教、五十嵐薫教授、有馬隆博教授、八重樫伸生教授、同大大学院医学系研究科の門間陽樹講師、同大大学院医工学研究科の永富良一教授、東京医科歯科大学健康推進歯学分野の相田潤教授、東北福祉大学保健看護学科の土谷昌広教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「European Journal of Oral Sciences」に掲載されている。
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口唇口蓋裂は最も頻度の高い先天異常の一つだが、子どもの成長発育への影響については結論が出ていない。加えて、これまでの報告には、追跡調査によるものがなかった。そこで研究グループは今回、大規模出生コホート調査の継続的な結果を用い、口唇口蓋裂児の幼児期の発達過程について検討を行った。
最も大きな違いは24か月のコミュニケーション、それ以降は差が減少
環境省が実施している子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)の約9万2,000人を対象に、そこに含まれる口唇口蓋裂児(195人)について、生後6か月~3歳までの精神運動発達について解析を行った。子どもの精神運動発達の評価には、日本語版Ages and Stages Questionnaire第3版(J-ASQ-3)を用いた。生後6か月~36か月まで、6か月毎に、保護者によってJ-ASQ-3を評価し、口唇口蓋裂を伴う子どもと先天異常を伴わない子どものJASQ-3の点数を比較した。
18〜36か月時点での話す・聞くなどの「コミュニケーション」、18・24か月時点での立つ・歩くなどの「粗大運動」、30・36か月時点での手順を考えて行動するなどの「問題解決」、6・36か月時点での他人とのやり取りに関する行動などの「個人・社会」で、口唇口蓋裂を伴う子どもが低い点数を示し、発達が遅れていた。最も大きな違いは24か月のコミュニケーションにおいて認められたが、それ以降は差が少なくなっていき、同様の変化が粗大運動でも見られたという。
手術歴や言語訓練の効果が機能発達・回復に貢献しているのか、今後検討が必要
今回の研究成果により、生後6か月~36か月の間の口唇口蓋裂を伴う子どもの精神運動発達は、先天異常を伴わない子どもと比較して遅れる傾向があるが、3歳時点までにさまざまな機能の追いつきが認められることが明らかにされた。
「過去のさまざまな介入研究の結果からも、臨床的介入(外科手術や言語療法、歯科治療など)が、口唇口蓋裂児の適切な機能発達・回復に貢献していることが予想される。本研究で用いたデータの内容ではそのことを示すことができないため、今後もさらなる検討が必要だ」と、研究グループは述べている。
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