自動輪郭作成ツール需要が高まる放射線治療、頭頸部の輪郭作成精度を評価
広島大学は3月11日、AI技術による自動輪郭作成システムであるStep-wise netを開発したと発表した。この研究は、同大大学院医系科学研究科の河原大輔助教、小澤修一特任准教授、永田靖教授ら、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)の医学物理ワーキンググループメンバーの西尾禎治教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Computers in Biology and Medicine」に掲載されている。
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放射線治療ではCTやMRIなどの医用画像上で腫瘍領域、正常臓器の輪郭作成を行う必要がある。これによって線量分布を臓器ごとに評価が可能になる。さらに臨床試験では統一したルールに基づき輪郭作成を行う必要もあり、自動輪郭作成ツールの需要は高まっている。
また、近年ではAIを活用した治療効果予測システムの開発が積極的に行われている。今回の研究ではAI技術による新たな輪郭作成システムであるStep-wise netを構築し、頭頸部の輪郭作成精度に関して評価を行った。
従来法との比較で、全ての臓器で最も精度が高い結果に
Step-wise netによって2段階の学習が行われる。1段階目では、輪郭作成の対象となる臓器周辺領域の抽出を、2段階目では抽出した領域内で臓器の輪郭作成を高精度に行う。
市販ツールであるAtlas法では、AI技術ではなく画像変形技術を活用しているが、精度は全ての臓器においてAIよりも低い結果となった。AIにおいて従来法(U-net)とStep-wise netを比較すると、提案したStep-wise netの方が全ての臓器で最も精度が高い結果となった。
輪郭作成時間、従来の10分の1以下まで短縮予定
臨床において自動輪郭作成が可能になることで、業務が大きく改善され、効率化が期待される。研究グループは、従来の10分の1以下まで輪郭作成時間が短縮される予定だとしている。
また、施設間における手動輪郭の差もない。臨床試験ではどの施設も同じような品質である必要があることから、同自動輪郭作成ツールの活用が期待される、と研究グループは述べている。
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・広島大学 研究成果