■厚労省作業部会で議論
厚生労働省の「薬局薬剤師の業務および薬局の機能に関するワーキンググループ」は10日、薬剤師が薬局以外でオンライン服薬指導を実施することをめぐって議論した。薬剤師の構成員は「保育や介護を行いながら働く薬剤師がやむを得ず自宅を離れられない場合など、限定的な実施にとどめるべき」と主張した一方、出席した参考人は、薬剤師の自宅でも安全に服薬指導を行うためのガイドライン策定を提案。薬局以外の場所でもオンライン服薬指導を推進すべきとの意見が相次いだ。
この日の部会で、橋場元構成員(日本薬剤師会常務理事)は「薬剤師が自宅からオンライン服薬指導を行える方策を検討する必要がある」と述べ、実施に当たっての留意事項など基本的考え方を示した。
オンライン服薬指導を行う薬剤師については、薬局で調剤業務に従事する薬剤師と規定。自宅から実施する場合は患者の意向やかかりつけ薬剤師でなければ対応できない場合に限定し、薬局で調剤業務に当たっている薬剤師が行う服薬指導の補完的業務の範囲にとどめるべきとした。
必要な環境として、画像や音声を伴うやり取りとなるため、薬剤師の同居家族などに患者の個人情報やプライバシーが漏洩しないための対策なども求めた。
橋場氏は「薬局業務は一般的なテレワークのように、常に薬剤師が在宅勤務で対応することを前提とした調剤、薬剤師業務は想定されにくいのではないか」と慎重な考えを示し、薬剤師が自宅でオンライン服薬指導を実施することが想定されるケースは、家族の病気や自身が新型コロナ感染や濃厚接触の可能性で自宅待機となった場合などに限られるとした。
山口育子構成員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)は、時限的・特例的措置でオンライン服薬指導を受けた患者から、対面に比べて服薬指導の質低下が挙げられていることを示し、「こうした実態を見ていると信頼できない」と指摘。服薬指導の質を担保する上で、「薬剤師が患者とどんなやり取りをしたのか音声データを残して、モニタリングや監査の品質保証ができるようにならないと無理ではないか」と現行の実施方法には否定的な見解を示した。
これに対し、中尾豊参考人(カケハシ社長)は、薬剤師の自宅でオンライン服薬指導を行うためには「ガイドラインの策定が必要」と提言した。具体的には、「薬歴情報を確認して服薬指導を行うとか、薬剤情報を画面に映して服薬指導を行うなどのルールを決めると一定の抑止力になるのではないか」と述べた。
佐々木淳構成員(悠翔会理事長・診療部長)は、在宅医として電話診療を行っている立場から、「診療所に行かないと患者の診療状況を確認できないということは今時ないし、薬局でも近い将来必ずそうなっていく」と指摘。
「オンライン服薬指導は自宅からやるのは危なくて、在宅の電話診療は自宅からやっていいというのはおかしなダブルスタンダード。服薬指導も許されていいはず」とルール改正に前向きな姿勢を示した。