国内承認されている治療薬、BA.2系統に対して有効か
東京大学医科学研究所は3月10日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬が、オミクロン株BA.2系統の培養細胞における感染や増殖を阻害するかどうかを解析し、その結果を発表した。この研究は同研究所ウイルス感染部門の河岡義裕特任教授、国立感染症研究所インフルエンザ・呼吸器系ウイルス研究センターの高下恵美主任研究官らと、国立国際医療研究センターが共同で行ったもの。研究成果は、「New England Journal of Medicine」のオンライン速報版として掲載されている。
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2021年末に新型コロナウイルスの変異株・オミクロン株が確認されて以来、同変異株による爆発的流行が世界規模で続いている。オミクロン株は、4つの系統(BA.1、BA.1.1、BA.2、BA.3)に分類され、BA.1系統に属する株が国内を含めた世界の流行の主流であるが、デンマーク、インド、フィリピン、スウェーデンなど一部の国々では、BA.2系統に属する株が主流となっている。
国内では、カシリビマブ・イムデビマブ、ソトロビマブの抗体薬、あるいはレムデシビル、モルヌピラビル、ニルマトレルビル・リトナビルの抗ウイルス薬がCOVID-19に対する治療薬として承認されている。しかし、これらの治療薬がオミクロン株BA.2系統に対して有効かどうかについては、明らかではなかった。
培養細胞に対し、カシリビマブ・イムデビマブ、ソトロビマブ、チキサゲビマブ・シルガビマブは中和活性
研究グループは、はじめに、4種類の抗体薬(バムラニビマブ・エテセビマブ、カシリビマブ・イムデビマブ、チキサゲビマブ・シルガビマブ、ソトロビマブ)がオミクロン株BA.2系統の培養細胞への感染を阻害(中和活性)するかどうかを調べた。
その結果、バムラニビマブ・エテセビマブのオミクロン株BA.2系統に対する中和活性は、著しく低いことがわかった。それに対し、カシリビマブ・イムデビマブ、チキサゲビマブ・シルガビマブ、ソトロビマブは、同変異株に対して中和活性を維持していることが判明した。しかし、これらの抗体薬のBA.2系統株に対する効果は、従来株(中国武漢由来の株)に対する効果と比較して低いことがわかった。
抗ウイルス薬はいずれも増殖抑制
続いて、3種類の抗ウイルス薬(レムデシビル、モルヌピラビル、ニルマトレルビル)の効果を解析。いずれの薬剤も培養細胞におけるオミクロン株BA.2系統の増殖を抑制することがわかった。
新型コロナの動物モデルを用いて引き続き検証
研究グループは、COVID-19治療薬がオミクロン株BA.2系統の増殖を効果的に抑制するかどうかをCOVID-19の動物モデルを用いて、引き続き検証する予定。「本研究を通して得られた成果は、医療現場における適切なCOVID-19治療薬の選択に役立つだけでなく、オミクロン株BA.2系統のリスク評価など行政機関が今後の新型コロナウイルス感染症対策計画を策定、実施する上で、重要な情報となる」と、研究グループは述べている。
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