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在日外国人対象の「新型コロナ影響調査」、在留資格で接種率に差-NCGM

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2022年03月11日 AM11:00

在日ベトナム人約1,000人を対象に、オンラインで匿名調査を実施

国立国際医療研究センター 国際医療協力局は3月9日、在日ベトナム人約1,000人を対象とした「新型コロナの影響調査」の結果を発表した。

同センターは、日本国内に在住する外国人が、必要な情報・支援・制度にアクセスするのを支援することを目的に、みんなのSDGs外国人タスクフォース、シェア=国際保健協力市民の会およびアジア経済研究所と共同で「みんなの外国人ネットワーク(Migrants Network & Action: MINNA)」を組織し、さまざまな活動を行っている。

今回、みんなの外国人ネットワークは、(以下、新型コロナ)による日本在住のベトナム人コミュニティへの影響について、数十万人のベトナム人がアクセスするFacebookページ「TAIHEN」を経由して匿名調査(2022年1月17日~1月30日)を実施。929人の回答を分析し、情報発信と支援に関する課題を明らかにした。

なお、回答者の性別は、女性 47%、男性 53%、年齢は、20代 80%、30代 14%、在留資格は、技能実習生 32.2%、留学生 29%、技人国 13%、特定技能 9%となっている。

27%が「症状があっても新型コロナウイルスの検査を受けていない」と回答

新型コロナウイルスの検査について、27%の在日ベトナム人が、「症状があっても新型コロナウイルスの検査を受けていない」と答えた。理由として、「費用がかかってしまうのではないか」(58%)、「検査がどこでできるのか分からない」(45%)という2点が最も多く挙げられた。また、これらの回答をした64%が「体の具合が悪くなったときにすぐに相談できる場所もしくは人がいない」と答えた。

これらの結果から、在日ベトナム人コミュニティが国や自治体等の適切な情報源へたどり着けておらず、相談できる環境にも乏しい状況であることがわかる。また、症状があるのに検査ができていないと、適切な隔離が行われないことから、公衆衛生的な問題も生じる。

在留資格によってワクチン接種率に差、自治体側が十分対応できていない場合も

「新型コロナワクチン接種率」は91%と高かった一方、在留資格によってワクチンの接種率に違いが見られた。留学生の93%、技能実習生の96%がワクチン接種をしていたが、仮放免の人の場合は40%、在留資格が期限切れの人は21%だった。ワクチンを接種していない理由には、「副反応が怖い」(38%)、「接種したいが時間が取れない」(31%)、「自分が接種対象か分からない」(24%)、「在留資格のトラブルが不安」(19%)などが挙げられた。

接種券は住民基本台帳に載っている人にしか郵送されないため、在留資格によっては接種券がもらえていないという状況がある。接種券がない場合は、自身で自治体に問い合わせをする必要があるが、日本語を話せない外国人にとっては大きな壁となる。また、在留資格によって接種券発行のプロセスが異なることがあり、自治体側が十分対応できていない場合もある。

住居に困っている、家賃や学費が払えないなど「生活困窮」に陥っている人が多い

今回の調査では52%が「住居に困っている」と回答した。さらに、その他の困りごとについても聞いたところ、「家賃が払えない」(回答者全体の12%)、「学費が払えない」(留学生の65%)、「食事に使えるお金が減っている」(全体の87%)などが挙げられた。

これらの結果から、生活困窮に陥っている在日ベトナム人が多いことが判明。体の具合が悪くなったとき、「すぐに相談できる相手がいない」と回答した人が46%いたことからも、心身の健康課題を含め、さまざまな生活の困りごとを何でも相談できる環境整備の必要性が明らかになった。

全ての移民・難民に在留資格に関わらず新型コロナワクチン接種を保障することが大切

今回の調査から、日本にいるベトナム人の多くが、新型コロナの影響で困っている実態が明らかになった。その原因として、新型コロナに関する必要な情報が届いていないこと、検査やワクチンにアクセスする上でさまざまな障壁があること、生活上の課題について相談できる環境が整っていないことなどが示唆された。今後の水際対策緩和に伴い、外国人にきちんと情報を届け、支援体制を整備することが、これまでにも増して喫緊の課題となると思われる。ワクチンに関しては、外国人の接種率が日本人の接種率に比べて低いことが報道されている。WHOは「全ての移民・難民に在留資格に関わらず新型コロナワクチンへのアクセスを保障することが原則」としている。

新型コロナのパンデミックは公衆衛生的な危機だ。皆が安全ではないと誰も安全ではない。外国人を含めて誰一人取り残されないような形で新型コロナ対策をさらに進めていくことが求められる。

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