英語、ポルトガル語、フランス語版が作成され諸外国で用いられている「RU-SATED」
京都大学は3月7日、米国ピッツバーグ大学で開発された、睡眠の健康を多角的に測定するための睡眠質問票「RU-SATED」の日本語版(RU-SATED-J)を作成、その信頼性と妥当性を検証し、RU-SATED-Jの信頼性と妥当性が確認されたことを発表した。この研究は、同大環境安全保健機構附属健康科学センターの降籏隆二准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Sleep Medicine」に掲載されている。
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睡眠は、身体的および精神的な健康の維持に不可欠である。睡眠の健康は、例えば、睡眠時間のような単一の尺度で評価できるものではなく、自覚的満足度、日中の眠気、タイミング、効率、持続時間、規則性など、夜間睡眠と日中の機能障害について多角的な視点で評価することが重要であり、英語ではMultidimensional Sleep Health(MDSH)と呼ばれている。近年、このような考え方に基づいた大規模な調査が世界各国で行われており、その結果、多角的な睡眠の健康は、慢性疾患、心血管疾患、心身の健康状態の悪化、うつ病、死亡率、医療費などさまざまな健康指標と関連することが明らかになってきた。しかし、日本語で多角的な睡眠の健康を簡便に評価する質問票は開発されていなかった。
RU-SATEDは、多角的な睡眠の健康を評価するためにピッツバーグ大学睡眠・概日リズム研究センターで開発された睡眠質問票。すでに英語版、ポルトガル語版、フランス語版が作成されて信頼性と妥当性が検証され、諸外国で研究に用いられている。今回研究グループは、厳格な翻訳手順を経て日本語版(RU-SATED-J)を作成し、日本人を対象とした調査を実施しその信頼性と妥当性を検証した。
日本人177人を対象に「RU-SATED-J」を検証、信頼性と妥当性を確認
RU-SATED-Jは、一時翻訳(英語から日本語)、逆翻訳(日本語から英語)、原版と逆翻訳版の比較検討、プレテストによる吟味、原著者による検討という、厳格な翻訳手順を経て作成された。質問票は6つの質問で構成されており、3つの選択肢から1つの回答を選択し、それぞれのスコアの合計得点(0-12点)を算出する。
作成したRU-SATED-Jを用いて、日本人(n=177、平均年齢42.8±11.6歳)を対象としてアンケート調査を実施した。結果、合計得点は平均8.21±2.72(最小0点から最大12点)だった。
RU-SATED-Jの内部信頼性を評価したところ、Cronbachのα係数は0.758であり、良好な内部信頼性を示した。構成概念の妥当性を検証するために探索的因子分析を行ったところ、2因子構造だった。この因子妥当性を検証するために、確認的因子分析を行い、適合度を評価したところ、高次因子モデルの適合度は、RMSEA<0.001、CFI=1.00などとなり、因子の妥当性が確認された。
今後多くの研究で用いられることに期待
RU-SATED-Jは、日本人成人の多角的な睡眠の健康を評価するための新しい睡眠質問票であり、信頼性と妥当性があることが示された。「今後、多くの人を対象とした調査や臨床研究での幅広い利用が望まれる」と、研究グループは述べている。
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