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「スパコン富岳×発見するAI」で抗がん剤耐性の未知の因果機構を高速発見-富士通ほか

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2022年03月08日 AM11:30

抗がん剤耐性探索における遺伝子発現変化の組み合わせは1000兆通りを超える

富士通株式会社()は3月7日、同社が開発した現場のデータから新たな発見の手掛かりを提示する技術「発見するAI」をスーパーコンピュータ「」上に実装し、従来は実行困難であった2万変数のデータを1日以内で超高速計算することが可能で、1000兆通りの可能性から未知の因果を発見できる技術(以下、同技術)を開発したと発表した。この研究は、富士通と東京医科歯科大学が共同で行ったもの。同技術開発は、」成果創出加速プログラムにおいて、東京医科歯科大学と京都大学、富士通などが参画する課題「大規模データ解析と人工知能技術によるがんの起源と多様性の解明」解決に向けた取り組みの一環として実施された。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

がんの分子標的薬は、患者への投与を続けると、その薬剤に対して耐性を獲得したがん細胞が増殖し、再発することがある。このように、複数のドライバー変異を獲得した細胞群が変幻自在に異常な振る舞いをするがん耐性獲得のメカニズム解明には、精緻なデータと解析技術が不可欠だ。薬剤開発や既存薬の再配置の臨床治験では、薬剤効果が期待される患者のおおまかな同定が重要だが、個人や臓器における遺伝子やその発現量などにより薬剤効果が異なり、複数の遺伝子の発現量を組み合わせたパターン数は1000兆通りを超えるほど膨大なため、医療や創薬の進歩の鍵を握る効率性が高い探索技術への期待が高まっている。

「発見するAI」を「富岳」上で実施、4,000年かかる計算を1日に短縮

富士通の開発技術「発見するAI」は、判断根拠の説明や知識発見が可能なAI技術「Wide Learning」を用いて、特徴的な因果関係を持つ条件を網羅的に抽出する技術として開発されたが、ヒトの全2万個の遺伝子を対象とした網羅的な探索には通常の計算機で4,000年以上かかる試算であったため、処理の高速化が課題となっていた。

富士通と東京医科歯科大学は、プロセッサ間とプロセッサ内の並列性を特長とするスーパーコンピュータ「富岳」上にヒトの全遺伝子を実用的な時間で分析できるよう、条件探索と因果探索を行うアルゴリズムを並列化し、実装することで、計算性能を最大限引き出した。さらに、「発見するAI」を活用し、統計情報に基づき薬剤耐性を生み出す条件となりうる有望な遺伝子の組み合わせを抽出することで、1日以内で網羅的な探索を実現する技術を開発した。

ゲフィチニブ耐性を探索、3つの転写因子発現変化に基づく新たな因果関係が示唆

スーパーコンピュータ「富岳」上で同技術を用いてDepMapの公開データを実行した結果、ヒトの全遺伝子に対して条件と因果関係を1日以内で網羅的に探索し、肺がんの治療薬に耐性を持つ原因となる遺伝子を特定することに成功。肺がんの治療薬などで用いられるゲフィチニブは、EGFR経路の活性化を抑えてがんの進行を抑制する分子標的薬であり、耐性が発生する現象が知られている。DepMapのがん細胞株約300種の遺伝子発現量データとゲフィチニブの感受性、耐性データを解析し、ゲフィチニブが効かないがん細胞株の条件とメカニズムを網羅的に探索した結果、ZNF516、E2F6、EMX1の3つの転写因子の発現量が低いという条件を探り当て、その条件を満たす肺がん細胞株では、転写因子SP7とPRRX1をトリガーとするメカニズムが耐性を生み出す因果として新たに示唆された。

バイオマーカー探索や個別化医療の加速・実現に期待

富士通と東京医科歯科大学は今後、遺伝子の発現量や変異のデータに加え、時間軸や位置データを組み合わせた多層的、総合的な分析を実施し、薬効メカニズムやがんの起源の解明などの重要課題における発見の手掛かりを提示する研究を加速するとともに、創薬、医学分野における実験研究の現場と連携していくとしている。東京医科歯科大学は、本研究で開発した技術を用いて、がんをはじめとする難病の攻略法の研究を推進していく。さらに、富士通は、マーケティングやシステム運用、生産現場において複雑に交錯する因子を発見し、意思決定を支援する取り組みを進めていく。

同技術開発について、京都大学医学研究科の小川誠司教授は、以下のようにコメントしている。「「Wide Learning」を用いた「発見するAI」は、薬剤開発の際の重要な興味であるバイオマーカー探索に資する技術となるだろう。新規薬剤開発の成功の鍵は、効果が期待される患者を同定して臨床試験を行うことだ。たとえばイマチニブを慢性骨髄性白血病ではなく大腸がんに対して治験を行えば必ず失敗する。そこで、薬剤の効果が期待できる人を予測するマーカー(遺伝子変異や遺伝子発現情報)があれば、その人だけを対象として臨床試験を行うことで、臨床試験の経費を大きく削減し、その成功確率を高めることができる。この点から、同技術は製薬メーカー等が大いに興味を持つことが期待される。「富岳」に実装されている点も期待感を大きくしている。」

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