■「ビンダケル」は75%下げ
厚生労働省は4日、全面改定した薬価基準を官報に告示した。4月1日から実施する。実勢価等改定分が薬価ベースで6.69%(医療費ベースで1.44%)引き下げられ、新薬創出等加算の返還額が加算額を初めて上回るなど製薬業界にとっては厳しい改定となった。安定確保医薬品のうち、優先度が高いカテゴリーAの品目が基礎的医薬品に加わり、抗菌薬「セファゾリン」など8成分69品目が適用された。用法用量変化再算定が適用されたファイザーのTTR型アミロイドーシス治療剤「ビンダケルカプセル」、類似品の「ビンマックカプセル」は75%の大幅な引き下げを受けた。
薬価基準が改定されるのは合計1万3370品目。そのうち131成分440品目が不採算を理由に薬価の引き上げと現行薬価が維持された。
新薬創出等加算の要件を満たしたのは348成分571品目となり、2020年度改定の335成分555品目を上回った。品目要件を満たした品目数は「希少疾病用医薬品」が187成分277品目、画期性加算や有用性加算等の「加算適用品」が86成分162品目などとなった。
効能追加のうち、新規作用機序で有用性・革新性のある品目を対象とするルールが20年度改定で運用開始となったが、「新型コロナウイルス感染症による肺炎」を追加した日本イーライリリーの「オルミエント錠」が初めて適用された。
品目要件を満たした加算対象571品目のうち、国内試験の実施数や過去5年間の新薬収載実績等をポイント化した企業要件を満たす上位25%(区分1)の企業数は22社とほぼ変わらなかった。
一方、加算係数が0.8の最下位グループに位置する「区分3」は、今回改定で加算係数にかかる企業区分間の企業数バランスを考慮し、対象範囲を拡大したため、8社から21社と大きく増加した。
新薬創出等加算の品目数が多かった製薬企業は、ノバルティスファーマが24成分40品目と前回改定に引き続き首位を維持し、次いでサノフィが19成分26品目、ヤンセンファーマが19成分30品目、武田薬品が19成分32品目となった。
また、中外製薬が14成分24品目、MSDが14成分24品目、第一三共が13成分21品目、ノーベルファーマが11成分27品目、協和キリンが10成分10品目の順となった。
新薬創出等加算の加算額は、約520億円と前回改定から約250億円縮小した。要件を満たさなくなった新薬で加算相当額を返還したのは65成分145品目、返還額は約860億円と初めて加算額を上回り、前回改定から約110億円増加した。
初後発品の収載から5年経過後も後発品に置き換えられていない長期収載品の特例引き下げは、58成分154品目と前回改定とほぼ変わらなかった。後発品収載から10年を経過する前でも置き換え率が80%以上となった長期収載品がその後の薬価改定時に引き下げ対象となる「前倒しルール」には、第一三共の「メマリー錠」、興和の「リバロ錠」など23成分59品目が適用された。
主な効能・効果が変更されたことで年間販売額が100億円を超え、変更前の10倍以上となった場合に適用される用法用量変化再算定では、「ビンダケルカプセル」「ビンマックカプセル」の2成分2品目が適用され、それぞれ75%の大幅な引き下げを受けた。
年間の販売額が大きい品目の薬価を引き下げる特例拡大再算定は、武田薬品の「タケキャブ錠」など4成分6品目が対象となり、タケキャブ錠は16%の引き下げとなった。通常の市場拡大再算定は、ユーシービージャパンの「イーケプラ錠」など17成分33品目が対象となった。
基礎的医薬品は323成分1004品目と前回改定の306成分763品目から大幅に拡大した。安定確保医薬品にかかる基礎的医薬品は「セファゾリン」や「メロペネム」など8成分69品目が適用となった。
2021年9月の薬価調査結果も示され、後発品数量シェアは79.0%、後発品への置き換えによる医療費適正効果額は1兆9242億円、バイオ後続品への置き換えで480億円の削減効果があった。