MID-NETは18年4月に本格稼働し、10拠点23病院から電子カルテデータやレセプトデータ、DPCデータを格納しており、570万人分の患者データが利活用可能となっている。製販後データベース調査の利用が可能であるものの、企業の利活用は6品目、製販後調査以外の企業利用は3調査にとどまるのが現状。
PMDAはデータ規模拡大に向けて、徳州会グループの10病院を24年度第2四半期にMID-NETに追加する予定だ。データベース収納後は700万人を超えるデータ量に拡大する見通し。
さらにMID-NETと連携する医療情報データベースとして、国立病院機構が運営する「NCDA」(66施設、約260万人)を選定。MID-NETとデータベースを統合するのではなく、分析用データセットフォーマットを介したデータ連携により統合解析が行える環境を構築する。
レセプトとDPCのデータ連携を先行的に実施し、23年度には連携を開始する予定。製販後調査に関するGPSP対応や利用料、運用ルールは今後検討するとしている。
2月25日にオンライン上で開催されたMID-NETシンポジウムでPMDAの宇山佳明医療情報活用部長・疫学課長は、「MID-NETの検査結果を利用することで使用成績調査と同様の評価が可能な場合がある。市販後医薬品安全性評価にMID-NETを活用して安全対策の質の向上に貢献していきたい」と語った。
また、PMDAは、将来的な安全対策措置につなげるために安全性情報を蓄積するための行政利活用調査として、MID-NETを用いた早期安全性シグナルモニタリングの運用を開始している。製薬企業にも、使用成績調査など検証的な利用目的に加え、安全対策の探索的な調査にもMID-NETを活用してもらえるよう提案していく。
パネルディスカッションでMSDグローバル研究開発本部ファーマコビジランス安全対策部の宮崎真氏は、「使用成績調査には使用実態把握という側面があり、使用成績調査に代わって使用実態把握調査を目的としたデータベース調査が将来は許容されるのではないか」と期待した。
その一方で、「探索的活用の点でリアルワールドデータの強みは迅速性にある。即座にデータにリーチできる体制がMID-NETにも必要」と述べ、迅速に利用できる環境整備を求めた。