筋トレと疾病・死亡との関連を検討した追跡研究を統合解析
東北大学は3月1日、これまでに公表されている研究結果を網羅的に収集して分析した結果、筋トレを実施すると、総死亡・心血管疾患・がん・糖尿病のリスクは10〜17%低い値を示し、総死亡・心血管疾患・がんについては週30〜60分の範囲で最もリスクが低く、糖尿病は実施時間が長ければ長いほどリスクが低くなることが明らかになったと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科運動学分野の門間陽樹講師、早稲田大学の川上諒子講師、澤田亨教授および九州大学の本田貴紀助教の研究グループによるもの。研究成果は、「British Journal of Sports Medicine」オンライン版に掲載されている。
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ここ数年、健康の維持増進や体型維持を目的に筋トレを行う人が増えている。さらに、自宅で簡単に実施できる筋トレは、このコロナ禍でますます注目されるようになってきた。筋トレには、レジスタンストレーニング(レジスタンス運動)、ウェイトトレーニング、自重トレーニングなど、筋肉に繰り返し負荷がかかり、筋力の向上が期待される活動すべてが含まれる。筋トレにより筋肉がつくことはよく知られているが、筋トレの実施は疾病の予防や死亡リスクの減少につながっているのか、さらに、リスク減少のためにどのくらいの筋トレを実施すればよいかについてはよくわかっていない。
研究グループは、18歳以上の成人を対象に筋トレと疾病および死亡との関連を長期的に検討した研究についてシステマティックレビューを実施した(1,252件)。その後、すべての論文を精査し、信頼でき、かつ、分析可能な研究を抽出(16件)。これらの研究結果をもとに結果を統合するメタ解析を実施し、筋トレ実施の有無および実施時間と疾病および死亡リスクの関連を検討した。
週130〜140分を超えると筋トレの好影響は消失し、高リスクになる可能性
分析対象となった疾患は、心血管疾患(9件)、がん(7件)、糖尿病(5件)、部位別のがん(=肺がん、膵臓がん、結腸がん、膀胱がん、腎臓がん、それぞれ2件)、さらに、死因を問わない死亡(=総死亡、8件)だった。
筋トレを全く実施していない群と比較して、筋トレを実施している群の総死亡および心血管疾患、がん、糖尿病のリスクは、ウォーキングやランニングなどの有酸素性の身体活動の影響を考慮しても、10〜17%低いことが明らかになった。
さらに、筋トレの実施時間の影響を確認したところ、総死亡、心血管疾患、がんでは週30~60分の実施で最もリスクが低くなった一方(約10~20%のリスク減少)、週130〜140分を超えてくると筋トレの好影響は消失し、むしろリスクが高くなることが判明。しかし、糖尿病については、実施時間が長ければ長いほどリスクが低い結果となった。
身体活動ガイドラインに生かされることに期待
今回の結果は、筋トレの長期的な健康効果を示している一方、やりすぎるとかえって心血管疾患やがん、死亡に対する健康効果が得られなくなってしまう可能性を示唆する重要な知見と考えられる。「健康の維持増進を目的に筋トレの実施が国際的に推奨されているなか、本知見はその推奨を支持するとともに、日本の身体活動ガイドラインにおいても新たに筋トレの実施を推奨する根拠となる重要なエビデンスの一つとなることが期待される」と、研究グループは述べている。
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