筋シナジー障害と歩行時の時間的特性の関係を検討
畿央大学は2月28日、脳卒中患者の歩行時にリズム聴覚刺激を併用することで時間要因を主として操作した結果、歩行時における時間的非対称性は筋シナジーと関連することを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院博士後期課程の水田直道氏と森岡周教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Archives of Rehabilitation Research and Clinical Translation」オンライン版に掲載されている。
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多くの脳卒中患者は歩行能力が低下し、日常生活や屋外での移動時にさまざまな困難さを経験する。歩行能力の低下には下肢筋活動パターンの異常が影響するといわれている。歩行時における下肢筋活動パターンは筋シナジー(多数の筋を低次元化し制御するメカニズム)によって制御されている。研究グループはこれまでに、脳卒中患者における筋シナジー障害が歩行能力に影響し、歩行時の運動学的特性が筋シナジー障害と関連していることを明らかにしてきた。しかし、筋シナジー障害と歩行時の時間的特性の関係性は明らかになっていなかった。
リズム聴覚刺激を併用することで麻痺側単脚支持時間が延長し、時間的非対称性が改善
今回研究グループは、介助なく歩行可能な脳卒中患者を対象に、歩行時の時間的非対称性と筋シナジーの関係性について検証した。対象者は2つの歩行条件(快適歩行:CWS、リズム聴覚刺激:rhythmic auditory cueing;RAC)で10m歩行テストを行った。RAC条件では、対象者にメトロノームのテンポに下肢の接地タイミングを合わせながら歩くよう指示。歩行動作には時間要因以外にもさまざまな要因が関与するため、RAC条件を設けることで時間要因を主として操作した。
その結果、歩行時にリズム聴覚刺激を併用することで麻痺側単脚支持時間が延長し、時間的非対称性が改善することがわかった。リズム聴覚刺激を併用した際における麻痺側単脚支持時間の変化量(快適歩行との差分)は、筋シナジーの単調性の変化量と関連することもわかった。一方で、同研究のプロトコルにおいて運動学的要因の変化量は筋シナジーの単調性の変化量と関連しないことも明らかになった。
筋シナジー障害の神経メカニズムの解明へ
今回の研究では、歩行時にリズム聴覚刺激を併用することで時間要因を主として操作し、歩行時における時間的非対称性と筋シナジーの関係性を調査した。結果として、歩行時の時間的非対称性と筋シナジーは関連することがわかった。「今後は筋シナジー障害の神経メカニズムを明らかにするとともに、脳卒中患者に筋シナジー障害がどのような回復過程をたどるかを調査する予定」と、研究グループは述べている。
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