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コロナ拡大下で「孤独感」は減少せず、若い世代で高い傾向-早大ほか

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2022年02月25日 AM11:00

2020年4月~2021年2月の調査でおよそ4割が孤独感、2022年は?

(JST)は2月24日、2022年2月に日本在住の約3,000人を対象にした調査を実施した結果、4割近くの人が孤独感を抱えており、新型コロナの感染拡大から2年近くが経った時点においても、孤独感はほとんど減少してないことが明らかになったと発表した。この調査は、、および、早稲田大学政治経済学術院の上田路子准教授(兼同法人理事)が、社会技術研究開発センター(RISTEX)戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発)「SDGsの達成に向けた共創的研究開発プログラム(社会的孤立・孤独の予防と多様な社会的ネットワークの構築)」におけるプロジェクト名「・孤立のない社会の実現に向けたSNS相談の活用」等の支援を受け、共同で行ったもの。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

今回の調査は、新型コロナの感染拡大が長期化し、自殺などの問題も深刻化する中で、人々が抱える孤独感を把握することを目的に行われた。対人交流が制限されるコロナ下では、多くの人々が孤独感を抱えていると考えられるが、日本人を対象とした大規模な調査は主に2020年のものに限られており、新型コロナの長期化が人々の孤独感にどのような影響を与えているかは明らかになっていなかった。孤独感に苦しむ人たちはメンタルヘルスの不調を併せ持つことが多く、自殺することを考える傾向も高いことが知られており、孤独感についての実態を把握し、必要な対策を考えることは喫緊の課題と考えられる。なお、2020年4月~2021年2月にかけて実施された調査では、およそ4割の人が孤独感を抱えているという結果であった。

「孤独感」とは、知り合いの数などで客観的に測ることのできる「社会的孤立」とは異なり、人間関係について当人が感じている主観的な気持ちである。そのため、人々が抱える孤独感を把握するには、本人に直接尋ねることが不可欠となる。調査では国際的に用いられる尺度を用いて日本在住の人の孤独感を測定することを主な目的とした。孤独状態にある人はメンタルヘルスの状態も悪いという研究報告が多くあることから、調査対象者のうつ状態および不安障害についても既存の尺度を用いて測った。さらに、新型コロナの感染拡大以前と現在を比較した「暮らし向き」の変化についても尋ね、調査対象者の置かれている経済的状況によって孤独感やメンタルヘルスの状態がどのように異なるかを明らかにすることを試みた。また、現在政府が取り組んでいる「孤独・孤立対策」への賛否についてもあわせて調査し、政策の認知度などを明らかにすることも目的とされた。

UCLA孤独感尺度を用いた孤独感、暮らし向きの変化などを調査

調査は20歳以上の日本在住の人を対象とし、2022年2月に2回に分けて実施。1回目は2022年2月2日~4日に実施し、有効回答者数は994人だった。2回目は2022年2月15日~17日に実施し、有効回答者数は2,017人だった。分析は2回の調査分を合わせた3,011人について行った。調査は対象者を性別・年齢層(10歳刻み)によってグループ分けし、各グループにおける回答者数が同程度になるように行われた。調査では、性別、年齢以外に居住都道府県、婚姻状態、学歴、世帯年収、雇用状態、同居する家族、新型コロナの感染拡大前(2020年1月)と比較した暮らし向きの変化、個人的なことを話せる友人(家族・親戚を除く)の数について尋ねた。

孤独感はUCLA孤独感尺度(3項目版)を用いて測定。これは3つの質問からなる尺度で、回答者の対人関係についての主観的な気持ちを尋ねるものだ。3つの質問の回答を数値化し、足し合わせることによって孤独感を測る。合計点は3から9の値をとるが、学術研究において標準的に閾値として用いられる6点以上を「孤独(状態)」と定義して分析を行った。うつ状態についてはPHQ-8(8-item Patient Health Questionnaire)という尺度を、不安状態についてはGAD-7(7-item General Anxiety Disorder)という尺度を用いて測定した。どちらも回答を点数化し、それぞれ10点以上を「うつ状態」(正確には「中程度から重度のうつ状態」)、「」(同上)と定義して分析を行った。さらに、政府が現在行っている孤独・孤立対策についての賛否を測るため、日本政府は孤独・孤立対策を行うべきかどうかを尋ねた。最後に、回答者にとっての「孤独」の定義を自由に書いてもらった。

全体の37.3%が孤独感、20代は42.7%と一番高い

全体では、37.3%の人々が孤独感を抱えていたことがわかった。2020年4月~2021年2月にかけて実施した調査の結果と比較したところ、新型コロナの感染拡大から2年近くが経った時点においても、孤独感はほとんど減少してないことが明らかになった。性別で見ると、35.1%の女性が孤独感を抱えていたのに対し、男性は39.5%が孤独感を抱えていた。年齢グループ別には、高齢者の孤独感が一番低く(23.7%)、一番高いのは20代の回答者だった(同42.7%)。

さらに、ひとり暮らしの人や配偶者がいない人は同居者がいる人たちや配偶者を持つ人(事実婚含む)よりも孤独感が高い傾向にあった。世帯年収が下がるにつれ、孤独感を持つ人の割合は上がる傾向にあり、暮らし向きの変化についても「(コロナ前より)悪化した」と答えた人のうち半数近く(47.8%)が孤独を感じていることが明らかになった。

「個人的なことを話せる友人の数が1人もいない」人の57.6%が孤独感

個人的なことを話せる友人の数については、「そのような友人がいない(0人)」の調査対象者のうち57.6%の人が孤独感を抱えていた。友人の数が上がるにつれ、孤独感は低くなる傾向にあった。孤独感については複数の要因が相互に影響を与えている可能性があるため、上記の要因をすべて考慮に入れて分析を行なったところ、特に「若者・中年(20~59歳)」、「男性」、「暮らし向きが悪くなったこと」、そして「(個人的なことを話せる)友人が一人もいないこと」が孤独感を高める傾向が強いことが明らかとなり、上記はすべて統計的に有意な結果であったという。

高齢者よりも若者にうつ状態の該当者が多い傾向

うつ状態については、高齢者よりも若者に該当者が多い傾向にあり、20~39歳の28.2%の同年齢の回答者が中程度から重度のうつ状態と判断される状態だった。高齢者については、7.5%が該当した。新型コロナの前は、うつ状態について若者と高齢者の間にこれほどの大きな違いは報告されていないという。

不安障害についても同様に、高齢者よりも若者のほうが不安障害を抱える傾向だった。孤独感とうつ状態、不安状態の関係については、孤独を感じている人は、孤独を感じていない人に比べて、うつ状態あるいは不安障害を抱える傾向がそれぞれ4.7倍、4.8倍であるという結果も得られた。また、コロナ以前に比べて暮らし向きが悪化した人も、メンタルヘルスの状態が悪い傾向にあった。

政府の孤独・孤立対策については、6割近く(57.9%)の人が行うことに賛成だった。34.5%の回答者は「どちらでもない」と回答し、7.6%の人は「行うべきでない」との意見だった。一方、全回答者の7.8%に当たる236人が孤独・孤立対策を行うべきか「わからない」と回答した。

比較的若い世代に向けた孤独・孤立対策を行うことが重要

今回の調査によって、孤独の現状に関するいくつかの重要な知見が明らかとなり、研究グループは次のように考察している。

第一に、孤独を感じる人の割合は新型コロナの感染拡大直後からあまり変化がなく、高いレベルが継続していること、そして孤独感はすべての年齢層の人が抱える可能性があることがわかった。特に、若者や中年の人のほうが高齢者よりも孤独を感じる傾向にあるという点は見逃されがちであり、比較的若い世代に向けた孤独・孤立対策を行うことが重要であると考えられる。

第二に、コロナ下で暮らし向きが悪化した人の孤独感が高く、そしてメンタルヘルスの状態も悪いことが明らかになった。今後の課題としては、暮らし向きが悪化した人が孤独な状況に陥る経緯を特定し、その知見に基づいて必要な支援を届けていくことが大切であると考えられる。例えば、失業などにより社会との接点が少なくなり、そのことが孤独感やメンタルヘルスの状態の悪化につながった可能性が考えられることから、孤独・孤立の実態について引き続き調査を行うことが必要だ。

第三に、政府が行う孤独・孤立対策については、6割程度の人が賛成であったことから、一定の支持は得られていることが明らかになった。しかし、「わからない」と回答した人も一定数いたことから、政府は孤独・孤立対策の意義や内容について丁寧な説明を続けていくことが大切であると考えられる。

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