膀胱平滑筋に対するPAFの作用を検討
東邦大学は2月22日、生理活性脂質である血小板活性化因子(PAF)がPAF受容体を刺激し、膀胱平滑筋を強力に収縮させることを発見するとともに、PAFの合成・分解システムが膀胱組織に存在する可能性を明らかにしたと発表した。この研究は、同大薬学部薬理学教室の田中芳夫教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載されている。
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血小板活性化因子(PAF)は、血小板を凝集させる物質として発見された生理活性脂質。その後の研究から、PAFは、白血球の活性化作用や血管透過性の増加作用を有し、炎症やアレルギー反応に関与することが明らかとなった。また、PAFは呼吸器、消化器、生殖器に存在する平滑筋を収縮させる効果や、血管平滑筋を血管内皮細胞依存的に弛緩させる効果も報告されている。近年、喫煙によりPAFが膀胱の微小血管内皮細胞や上皮細胞で蓄積することが報告されており、下部尿路疾患の発症に重要な役割を果たす可能性が指摘されている。ただし、膀胱平滑筋に対するPAFの作用はこれまでのところ、検討されていなかった。
PAFはPAF受容体を刺激して膀胱平滑筋を強力に収縮させ、自発性収縮活動を亢進
今回、研究グループは、膀胱平滑筋に対するPAFの効果を検討するため、マグヌス法を用いてモルモットおよびマウスから摘出した膀胱平滑筋の基礎張力および自発性収縮活動に対するPAFの効果を検討した。
その結果、PAF(10−9–10−6M)は、PAF受容体を刺激することでモルモットおよびマウス膀胱平滑筋の基礎張力および自発性収縮活動の振幅と頻度を濃度依存的かつ強力に増強すると判明。モルモットおよびマウス膀胱平滑筋の収縮活動に対するPAF(10−6M)の増強効果は、PAF受容体拮抗薬であるapafant(モルモット:10−5M;マウス:3×10−5M)の前処理によって強力に抑制された。
膀胱組織にPAFの合成・分解システムが存在する可能性
また、PAFの合成・分解システムが膀胱組織に存在する可能性を明らかにするため、RT-qPCRを用いて、モルモットおよびマウスの膀胱組織におけるPAF受容体、PAF合成酵素(リゾホスファチジルコリンアシルトランスフェラーゼ、LPCAT)、PAF分解酵素(PAFアセチルヒドロラーゼ、PAF-AH)のmRNA発現量を調べた。その結果、PAF受容体(Ptafr)、LPCAT(Lpcat1、Lpcat2)、PAF-AH(Pafah1b3、Pafah2)のmRNAがモルモットおよびマウスの膀胱組織で検出された。これらの結果は、PAFが膀胱組織で合成・分解され、PAF受容体を介して膀胱平滑筋の収縮性を制御する内因性の生理活性脂質である可能性を示すもの。研究グループは、PAFが過活動膀胱(OAB)などの下部尿路疾患を引き起こす原因物質の1つとなる可能性を示す結果だとしている。
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