うつ病に対する理解の低さや心理社会的・経済的資源不足が、各国の経済的繁栄に影響
京都大学は2月16日、同大大学院医学研究科の古川壽亮教授が、神経科学からグローバルヘルスまで含む幅広い分野の世界11か国25人の専門家とともに、うつ病の世界的負担を軽減するために一致団結した行動を呼びかける宣言をしたことを発表した。同宣言は、「Lancet」の特集号に掲載されている。
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全世界の成人の5%が毎年うつ病に罹患していると推定されているが、依然として軽視されている世界的な健康危機であり、特に若年層での発症が最も多くなっている。同疾患に対する理解の低さ、心理社会的・経済的資源の不足が、予防、診断、治療、そして各国の経済的繁栄に影響を及ぼしている。
Lancet-世界精神医学会委員会は、診断、治療、予防における不公平や広範な無視に取り組むため、革新的な段階的ケアと早期介入を優先し、資源の乏しい環境などにおいて共同ケアを提供するなど、意欲的な勧告を概説している。
一方、専門家は心臓病やがんなどの他の分野と同様の効果を得るために、社会全体でうつ病予防に取り組み、国連の持続可な開発目標の全体的な追求を確実にすることを呼びかけている。Lancet誌と世界精神医学会のうつ病に関する委員会は、うつ病の世界的な負担を軽減するための社会全体の対応を求めており、世界が直面しているうつ病の持続的、かつ、ますます深刻な世界的危機に対処できていないとしている。
苦痛と早すぎる死の原因となるうつ病に対し、世界が一致団結して行動すべき
資源に乏しい環境であっても、うつ病を予防し、回復を助けるために多くのことができるという多くの証拠があるにもかかわらず、どの年においても、世界中の成人人口の5%がうつ病と共存していると推定される。高所得国でも、うつ病に苦しむ人々の約半数が診断も治療も受けておらず、低・中所得国では80~90%にも上る。これに加えてCOVID-19の大流行が、社会的孤立、死別、不確実性、苦難、医療への限られたアクセスなど、さらなる課題を生み出し、何百万もの人々の精神衛生に深刻な打撃を与えている。
このような背景から、委員会は「うつ病に対して世界が一致団結して行動するときが来た」と呼びかけ、政府、医療従事者、研究者、うつ病患者やその家族による協調的・協力的努力を求めている。
政府に対しては「当事者の経験とサイエンスに耳を傾けよう」「早期介入と治療継続に投資しよう」など、医療従事者に対しては「個人ごとにアプローチ」「共同治療を実践しよう」など、研究者に対しては「新しい治療をデザインして試験しよう」「当事者と協力しよう」など、うつ病患者を含む一般社会に対しては「早くから援助を求めよう」「サポーターになろう」など、いずれも具体的なものとなっている。
うつ病のケアと予防の改善、知識のギャップの解消、認知度の向上により、回避できる苦痛と早すぎる死の主要原因の1つに世界で取り組んでいくと宣言している。
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