東京・岩手・沖縄の学童期の子どもを育てる保護者が対象
東京都市大学は2月16日、学童期の子どもを育てる保護者へ生活実態調査を行い、新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)の影響による保護者と子どもの状況、課題を明らかにしたと発表した。この研究は、同大総合研究所子ども家庭福祉研究センター長の早坂信哉教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「j-stage」に掲載されている。
画像はリリースより
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COVID-19対策の特別措置法に基づく1回目の緊急事態宣言が発出されてから間もなく、2年が経とうとしている。外出自粛や休校、テレワーク推奨などの急激な変化は、子育て家庭の環境にも大きな影響を及ぼしており、不安やストレスを抱える保護者は少なくない。
調査の対象者は、学童期の子どもを育てる保護者319人(緊急事態宣言等の期間の異なる3都県:岩手県105人、東京都108人、沖縄県106人)で、調査には基本データ16項目と調査内容32項目から構成された質問紙を用い、2021年1月にweb調査会社を介して行われた。
東京は他地域に比べ、子育て環境の変化と仕事の能率や成果に影響の傾向
子どものことでの不安なことを尋ねたところ、「運動不足」(59.9%)、「教育」(54.5%)、「健康」(45.5%)、「心の問題」(37.9%)の順に、学童期の子どもへのネガティブな影響を不安視する家庭が多いことが明らかになった。
COVID-19の流行前後における子育て環境の変化と仕事の能率や成果への影響については、他地域と比較して東京都において「影響があった」と回答した保護者が多く、このうち良い影響があったと感じていた保護者は、家庭生活において「子どもと話す時間が増えた」(67.5%)、「子どもと一緒に遊ぶ時間が増えた」(61.3%)、「子どもとの距離が近づいた」(28.8%)などが理由として挙げられた。一方、悪い影響があったと感じていた保護者は、仕事において「ながら仕事になる」(39.5%)、「集中して仕事ができない」(34.2%)、「仕事と育児の切り替えがうまくできない」(34.2%)などの理由が挙げられた。良い影響については家庭生活における子どもとの関わりのポジティブな変化、悪い影響については家事、仕事における能率や成果へのネガティブな影響が認められた。
子どもと一緒に過ごす時間が増えたことによるストレスも
外出自粛時に親がストレスを感じたことについては「子どもの昼ご飯を準備すること」(43.9%)、「子どものゲームやテレビ視聴が長くなること」(42.9%)、「子どもを連れて外出しづらいこと」(40.8%)、「子どもに勉強を教えること」(35.1%)などが挙げられ、子どもと一緒に過ごす時間が増えたことによるストレスも明らかになった。
また、学校に登校できない期間を想定した備えをしているか、という質問に対しては、他地域と比較して東京都において「すでに対策を考えている」と回答した保護者が多く、すでに実施した具体的な対策については「習い事」「学童保育」「保護者が学校の宿題を確認する」の3項目において、東京都の保護者が他地域よりもその有効性を高く評価する結果となった。
有効な支援モデルを提案することが今後の課題
今回の研究は、COVID-19の感染拡大に伴う行動制限等の施策を背景に、ストレス負荷の高い状況におかれた学童期の子育て家庭に生活実態調査を行い、家庭における保護者と子どもの状況と課題を明らかにすることを目的として行われた。
現在もオミクロン株による第6波が収まらない状況であるが、研究成果は、以前のような緊急事態宣言や休校が増加した際に、学童期の子どもを育てる家庭がどのような不安やストレスを抱え、どのような支援を必要とするのかについての一つの指針となる。
「今回の研究の引き続いての課題は、より大規模な調査の実施を通して研究知見の精緻化を図るとともに、休校期間中の子どもの教育について子育て家庭が抱える不安に対して有効な支援のモデルを提案していくことが考えられる」と、研究グループは述べている。
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・東京都市大学 プレスリリース