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85歳以上の尿路結石症患者に対する内視鏡手術の安全性と有効性を示す-関西医科大ほか

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2022年02月16日 AM11:00

手術療法が標準治療でも、超高齢者患者では安易に選択するのが難しい

関西医科大学は2月15日、尿路結石症に対する内視鏡手術(経尿道的尿管結石砕石術、TUL)の安全性と有効性について、85歳以上の超高齢者と65歳未満の若年者の治療成績を比較し、特に超高齢者で合併症が増えることなく同等の治療成績であることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大腎泌尿器外科学講座の田口真助教らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Endourology」に掲載されている。

上部尿路結石症の罹患率は年々増加傾向であり、男性は7人に1人、女性は15人に1人が生涯に1回罹患するとされている。結石ができる危険因子として、寝たきりに近い状態(長期臥床)があるが、近年の高齢化社会の進行に伴い、高齢者施設や療養型の病院に入院し、日常生活の活動性が低下している人々の結石症が増加し問題になっている。その多くは高齢のため、身体機能が落ちていたりさまざまな合併症を抱えていたり認知症があったり、どこまで積極的な医療(手術療法)を行うか、現場では常に判断に迷う状況がある。

結石症の場合、尿管に結石が落ちてきて尿管が閉塞すれば、特に高齢者では、急性腎盂腎炎から敗血症に至ることも多く、敗血症に至れば致死率が数十%となる。結石に対する標準治療は手術療法であるが、手術療法も一定の侵襲を伴うため、高齢者に対する安全性が証明されなければ、安易に手術療法を選択することはできない。また、積極的な治療(手術療法)を考慮しても、高齢者に対する安全性と有効性を示した報告が少なく、治療を躊躇せざるを得ない状況がある。また高齢者といっても、報告により65歳以上と定義されている場合もあれば、75歳以上と定義されている場合もあり、本当に必要な超高齢者の情報はほとんどないのが現状だ。

そこで研究グループは、結石症患者を若年者(65歳未満)、高齢者(65歳以上85歳未満)、超高齢者()に分類し、それぞれの年齢群における内視鏡手術の有効性と安全性を調査し、超高齢者でも安全に手術療法を受けることができることを証明するため研究を実施した。

157人を解析した結果、内視鏡手術による合併症率は若年者と同程度と低いと判明

2017年5月~2019年5月までに大阪府済生会泉尾病院で行われた結石症(上部尿路結石)に対してTULを実施した157人のデータを後ろ向きに解析し、85歳以上の超高齢者と65歳未満の若年者の治療成績を比較した。

65未満グループ、65歳以上85歳未満グループ、および85歳以上グループの治療前の平均結石径はそれぞれ8.9±4.9mm、10.8±7.7mm、11.4±6.3mmだった。平均手術時間は76.6±33.1分、86.7±44.7分、84.0±44.5分、結石除去率は95.9%、94.4%、96.3%、合併症の発生率は8.2%、9.8%、3.7%だった。

今回の研究では、特に超高齢者で寝たきりあるいは併存疾患を多数持っている患者の割合が高かったが、内視鏡手術の実施による合併症率は若年者と同程度と低く、超高齢者に対する内視鏡手術の安全性と有効性を示したという。

患者QOL向上、医療財政への負担軽減に貢献することに期待

一般的に85歳以上の超高齢者の尿路結石患者に対して、積極的に内視鏡手術を行うかどうかは迷うところ。術後合併症のリスクを考え手術は行わず、治療自体を諦めたり、定期的な尿管ステント交換を長期間繰り返し、尿管結石に対する根本的な治療を先延ばしにしたりする場合も少なくない。しかし、治療しなければ致死的な感染症のリスクは増加し、尿管ステントで尿管の閉塞を防いだとしても、ステントによる排尿障害や血尿などのトラブルは患者のQOLを著しく低下させる。また定期的な受診は本人だけでなく家族や施設職員にも負担であり、かつ医療費の増加にもつながる。そのため内視鏡手術で根治的に結石を除去して、尿管ステントが不要な状態を目指すことが望ましい。

「85歳以上の超高齢者でも、今回の研究データをエビデンスにして安全かつ有効な内視鏡手術が普及すれば、患者本人のQOL向上につながり、本人や家族、施設職員の負担を軽減することができ、さらに医療財政への負担も軽減できるという点からもメリットがあると考えられる」と、研究グループは述べている。

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