健康食品の免罪符型動画広告が、視聴者の認識に与える影響は?
東京大学は2月14日、「免罪符型」の健康食品の動画広告の閲覧によって、視聴者の「健康食品を摂取すれば、不健康な行動をしてもよい、健康行動をしなくてよい」という認識が強まることを実証したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科の家れい奈大学院生、奥原剛准教授、木内貴弘教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Healthcare」に掲載されている。
公衆衛生のいくつかの研究では、健康食品の有効性は極めて限定的であるといわれている。健康食品を摂取するか否かに関わらず、食生活・生活習慣の実行は重要であり、健康食品は乱れた食事や運動不足を簡単に解消できるものではない。民間の調査では、特に「脂肪」への効果を訴求する健康食品への関心が高いことがわかっている。また、近年の通信環境の発展に伴い、動画広告に接する機会が増えている。
研究グループは、日本の脂肪への効果を訴求する健康食品の動画広告に、「どのような」内容が「どれくらい」あるのかを類型化する内容分析を実施し、「免罪符型」と名付けられる広告が、分析対象の広告の約25%を占め、最も多いことを明らかにした。免罪符型の広告では、健康食品を、脂質の多い食品を摂取するための免罪符かのように描いており、「健康食品を摂取すれば、不健康な行動をしてもよい、健康行動をしなくてよい」という誤った認識を視聴者にもたらす可能性があると考えた。そこで今回、脂肪への効果を訴求する健康食品の免罪符型動画広告が、視聴者の認識に与える影響を評価することを目的として、ランダム化比較研究を実施した。
免罪符型の広告は「健康食品を摂取すれば、不健康な行動をしてもよい、健康行動をしなくてよい」という誤った認識を高めていた
調査会社の登録モニター788人を対象に、インターネット調査を実施。参加者を介入群または対照群にランダムに割り付けた。介入群に割り付けられた参加者394人は、以前の研究で免罪符型と特定した動画広告のうち、再生回数が多い3本の動画を閲覧した。対照群に割り付けられた参加者394人は、健康食品とは無関係のお茶の抽出方法に関する動画を閲覧した。
「健康食品を摂取すれば、不健康な行動をしてもよい、健康行動をしなくてよい」という認識に関する質問9問について、参加者に「非常にそう思う」から「全くそう思わない」までの6段階で動画の閲覧前後に尋ね、平均値を算出。動画を閲覧した後の認識の平均値を、介入群と対照群で比較した(閲覧前の値を共変量として調整した共分散分析)。
その結果、「免罪符型」の動画を閲覧した介入群は、お茶の動画を閲覧した対照群と比較して、統計学的有意に強く「健康食品を摂取すれば、不健康な行動をしてもよい、健康行動をしなくてよい」と認識した(p<0.001)。これにより、「免罪符型」の健康食品の動画広告は、「健康食品を摂取すれば、不健康な行動をしてもよい、健康行動をしなくてよい」という誤った認識を高めることが明らかになった。
免罪符型広告の内容改善の重要性を示唆
今回の研究により、日本の健康食品の広告が視聴者の認識に与える影響が公衆衛生の観点で初めて明らかにされた。健康食品を、不健康な行動をとるための免罪符かのように描く「免罪符型」の動画広告は、特定の文言で「健康食品を摂取すれば、不健康な行動をしてもよい、健康行動をしなくてよい」と訴求しているわけではない。しかし、動画広告内のストーリーや登場人物の表情などを通じ、「健康食品を摂取すれば、不健康な行動をしてもよい、健康行動をしなくてよい」という誤った認識を高めることが示された。
「免罪符型の広告が、もし、日常的に不健康行動も誘発しているとなれば、不健康行動による害の方が大きいだろう。健康食品の動画広告の内容を改善する重要性が示唆された」と、研究グループは述べている。
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