個々人に合わせた最適な花粉症診療が進まないという課題
順天堂大学は2月9日、多様な花粉症症状の層別化や発症要因の解明等の研究に役立てることを目的として開発されたスマートフォン用アプリ「アレルサーチ(R)」の機能追加を行い、1月20日に公開したことを発表した。この研究は、同大医学部眼科学講座の猪俣武範准教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Allergy」に掲載されている。
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花粉症は日本で約3000万人が罹患する最も多いアレルギー疾患。発症すると日常生活のQOLが低下するだけでなく、仕事や学業の生産性低下にも影響し、社会コストを増加させるといわれている。また、花粉症はアレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、花粉皮膚炎などの多臓器に渡る症状を引き起こすが、その症状の出現部位や重症度、治療への効果等は個人差が大きく、個々人に合わせた最適な花粉症診療が進まないという課題があった。
「アレルサーチ(R)」による研究では、趣旨に賛同した患者・市民委員を公募し、意見交換会を実施しながら、アプリのアップデートを実施。患者・市民委員と研究グループの対話を通じて、患者・市民委員にアプリを丁寧に評価してもらい、花粉症に関する質問項目や、インターフェースの改善を行った。
「花粉症タイプの見える化」「おすすめの花粉症対策提案」を追加
同アプリには今回、「花粉症タイプの見える化」機能が加わった。ユーザーの花粉症症状をグラフにより視覚化し、適切な治療介入やセルフメディケーション(自己管理)の実施を可能にするもの。この機能は、2018年2月1日から2020年5月1日に行われた「アレルサーチ(R)」を用いたクラウド型大規模臨床研究により開発された、花粉症の症状を層別化する手法を応用して作成された。
また、ユーザーの花粉症タイプを明らかにするだけではなく、「おすすめの花粉症対策提案」機能も追加された。マスク、メガネ・ゴーグルの着用、点眼薬の使用などの中から、個々人の花粉症タイプに合ったお勧めの予防行動を提案する。また、すでに実施している予防行動や、その割合を記録し、より適切な予防行動の選択をサポートする。
「アップデートにより、ユーザーの花粉症タイプを視覚化し、予防行動の提案による個々人によるセルフケアを推進することで、ユーザーのQOLの向上のみならず、保険診療である花粉症を「セルフメディケーション(自己管理)」にシフトさせることで、医療費削減にも大きく貢献できることを期待している」と、猪俣准教授は述べている。
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・順天堂大学 プレスリリース