薬剤師の地域偏在解消に向け、都道府県が薬剤師確保策に乗り出す。厚生労働省は各都道府県に、地域医療介護総合確保基金を活用し、修学資金を貸与した薬剤師には当該都道府県内の医療機関に一定期間就業する条件で、返済義務を免除するとの考え方を提示。薬学生向けに地元薬剤師の活動を紹介し、県内薬局への就業につなげる取り組みや県内出身者に対するUターン・Iターン就職の働きかけを強化する。
2021年に取りまとめられた厚労省の「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」の報告書では、将来的に薬剤師が余剰となる一方、薬剤師の地域偏在で薬剤師確保が困難な地域が出てくると指摘。これを受け厚労省は2021年12月、地域医療介護総合確保基金を活用した薬剤師修学資金貸与事業の取り扱いに関する通知を発出し、都道府県が修学資金を貸与した薬剤師は当該都道府県の医療機関に原則として貸与期間の1.5倍以上就業することを返済義務免除条件とした。
宮城県は県内人口10万人当たりの薬剤師数が全国平均に比べて少なく、仙台市に約63%が集中。県地域医療計画では、県内薬剤師の確保により、県内人口10万人当たりの薬剤師数を全国平均まで引き上げることを目標に掲げる。
地域医療介護総合確保事業(医療分)を活用し、▽薬学生▽小中高生▽未就業者▽人材育成研修――の4項目で薬剤師確保に取り組む。薬学生に対して被災地の薬局・施設見学や多職種連携等薬局実務実習など地元薬剤師の活動紹介や体験実習を実施し、小中高生向けには未来の薬剤師セミナー、薬局薬剤師実務体験などを企画している。
山陰地方に薬学部がなく、県外の薬学部に進学した出身者が県外に就職することも多い鳥取県は、薬剤師数は増加傾向にあるものの、薬剤師不足にあえぐ。薬剤師会の協力を得て薬剤師無料職業紹介所を開設しているほか、県独自に「未来人材育成奨学金支援助成金」を設け、薬剤師として正規雇用されれば、奨学金の返還額の一部を助成する制度も実施している。