歩行時における筋シナジーの異常パターンからサブタイプを特定し、歩行特性を検証
畿央大学は2月7日、脳卒中患者の歩行時における筋シナジーの異常パターンからサブタイプを特定し、その歩行特性について検証した結果を発表した。この研究は、同大大学院博士後期課程の水田直道氏と森岡周教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「PLOS ONE」に掲載されている。
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多くの脳卒中患者は歩行能力が低下し、日常生活や屋外での移動時にさまざまな困難さを経験する。歩行能力の低下には下肢筋活動パターンの異常が影響するといわれている。歩行時における異常な筋活動パターンは立脚相または遊脚相において確認され、運動学的特徴においても症例ごとに異なるパターンを示すことは臨床上明らかだが、それらの関係性は不明だった。
3つのサブタイプを特定、歩き方で筋シナジーの異常パターンが即時的に改善するタイプも
研究グループは、介助なく歩行可能な脳卒中患者を対象に、3つの歩行条件(快適歩行:cws,麻痺側下肢大股歩行:p-long,非麻痺側下肢大股歩行:np-long)で10m歩行テストを実施。p-longおよびnp-long条件では、対象者にそれぞれの下肢を前に大きく振り出しながら歩くよう指示した。そして、cws条件における麻痺側下肢の筋シナジーの併合パターンに基づき、3つのサブタイプを特定した。
立脚期における筋シナジーの異常パターン(単調な筋シナジー制御)がみられるサブタイプでは、「快適歩行時に麻痺側下肢伸展角度が減少」した。また、遊脚期における筋シナジーの異常パターンがみられるサブタイプでは、「快適歩行時に麻痺側下肢屈曲角度が減少」していることが判明。遊脚期における筋シナジーの異常パターンがみられるサブタイプでは、「麻痺側下肢を大きく振り出す(屈曲角度の増大)ように歩くと、筋シナジーの異常パターンが即時的に改善する」ことが明らかになった。
今後はサブタイプの神経基盤を解明し、筋シナジーの異常パターンが辿る回復過程を調査予定
今回、歩行時における筋シナジーの異常パターンからサブタイプを特定し、サブタイプの歩行特性について検証した結果、筋シナジーの異常パターンは3つのサブタイプに分類され、それぞれのサブタイプに応じて快適歩行時の運動学的パラメータが異なっていることが明らかになった。また、遊脚期における筋シナジーの異常パターンを示すサブタイプにおいては、麻痺側下肢を大きく振り出すように歩くと、筋シナジーの異常パターンが即時的に改善することがわかった。
研究グループは、今後、サブタイプの神経基盤を明らかにするとともに、筋シナジーの異常パターンがどのような回復過程を辿るか調査する予定だとしている。
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