■現場からは安堵の声も
新型コロナウイルスの検査数が増大し、抗原定性検査キットやPCR検査キットが品薄となっている問題で、一部の県は薬局での無料検査を一時中止した。1日に岡山県は感染拡大時に無症状者が薬局で無料検査を受けられる一般検査事業を休止し、5日には茨城県が薬局での無料検査を取りやめた。発注した検査キットが薬局に届かず、検査を受けられない地域住民の苦情対応に追われた薬局からは、「負担軽減につながる」との安堵の声が漏れた。
政府はワクチン接種歴を問わず、感染不安を感じる無症状者を対象に薬局などで無料検査を実施してきた。しかし、新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」による感染が拡大し、全国的な感染者数の急増に伴い、医療機関や薬局、検査センターなどで検査を求める人も爆発的に増加し、抗原検査キットやPCR検査キットが品薄状態となっていた。
政府は1月27日、検査キットメーカーに対して当面、1日80万回分までの緊急の増産・輸入を要請すると共に、流通不足に陥っている新型コロナウイルス抗原定性検査キットの供給を確保するため、医薬品卸売業者や検査キットメーカーに対し、医療機関向けを最優先に検査キットの供給を行うよう要請していた。
医療機関分の検査需要に対応できない都道府県では、薬局での無料検査を中止したり、検査数を制限する措置に踏み切った。全国でいち早く薬局での無料検査を開始し、5日に中止を決定した茨城県では、PCR検査キット供給量が1日1万1000件に対し、需要量は1万3000件と上回った。
1日3000件の供給量しかない抗原検査キットは、薬局の無料検査7500件を含む計1万7500件と、検査を希望する人からの需要に対応できない状況が続いていた。
コロナの無料検査は薬局での調剤業務にも影響を及ぼした。抗原検査結果は当初、検査翌日に受検者へと通知することになっていたが、通知日が検査の翌々日、3日後になるなど遅延が発生。
さらに、抗原検査キットを発注しても発注量よりも少ない分しか調達できず、事態は日を追うごとに悪化した。検査希望者が朝の営業時間前から薬局に列を連ねたが、順番が来る前に在庫切れとなり検査を受けられず、薬局の薬剤師が苦情対応に追われた。クレームの電話は薬剤師会にも飛んできた。
県薬剤師会は各薬局が作成した検査結果通知書の取りまとめを行っていたが、1日にFAXで送られてくる約1700枚の検査結果通知書を処理することになり、事務局がパンク状態に陥ったという。
岡山県は、飲食やイベント、旅行、帰省を目的としたワクチン検査・パッケージによる無料検査事業は継続しているものの、1日に感染不安を感じる無症状の県民を対象とした感染拡大時の無料検査を一時中止した。
県薬剤師会は無料検査に対応できるよう協力薬局を増やす働きかけを行ったが、想定よりも少ない100軒程度にとどまり、そこに住民が殺到。薬剤師会担当者は「検査に対応する薬局では業務が逼迫していたが、無料検査の一時中止で負担が軽減されている」と話す。
一方、その他の県でも無料検査を制限する動きが出ている。福井県は検査機関の負担軽減のため、1日から当面の間、検査方法を抗原定性検査に限定しており、富山県は薬局で実施する無料検査の数を制限する方針を示している。