発症間隔=(二次感染者の発症時刻)-(一次感染者の発症時刻)
国立感染症研究所(感染研)は1月31日、「SARS-CoV-2の変異株B.1.1.529系統(オミクロン株)の発症間隔の推定:暫定報告」と題した速報を発表した。同報告は、感染研で、実地疫学調査のデータを用いてオミクロン株の発症間隔の推定を行った暫定結果であり、新型コロナウイルス感染症対策に資する情報を提供することを目的として行われたもの。
画像は感染研サイトより
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発症間隔(serial interval)は、一次感染者の発症時刻から二次感染者の発症時刻の時間間隔を意味する。一次感染者の感染から二次感染者が感染するまでの期間(世代間隔:generation time)は感染症の拡がりを特徴づける重要な指標だが、感染イベントを実際に観測することが難しいことから、発症間隔により近似されることが多い。オミクロン株においては、従来株と比較して潜伏期間が短縮しており、発症間隔についても短縮されているかについて、国内のデータを用いて検討が行われた。
「発症日-発症日」が明らかな感染ペア30組で検討
国内でオミクロン株症例に対して実施された実地疫学調査により、感染源からの曝露から14日間が経過した対象集団の中で、疫学的リンクおよび感染源(一次感染者)および感染者(二次感染者)の発症日が明らかな感染ペア(N=30)について、発症日から発症日までの日数を得た。この中には家族内感染と考えられるペアが9組含まれた。
発症間隔の確率密度関数を計算するために、Gamma分布、Lognormal分布、Weibull分布について検討し、赤池情報量規準(AIC)から一番当てはまりが良いと判断されたWeibull分布を計算に用いた。最尤推定法を用いて推定を行いブートストラップ法により95%信頼区間を計算した。
中央値「発症間隔2.6日<潜伏期間2.9日」、発症前に二次感染者発生の可能性
結果、実地的疫学調査を用いたオミクロン株症例の発症間隔の中央値は2.6日(95%信頼区間(CI):2.2-3.1)だった。発症間隔の95%は0.7日(95%CI:0.4-1.2)から4.9日(95%CI:4.1-5.8)の間だった。99%が5.4日(95%CI:4.4-6.4)以内だった。
発症間隔が実地疫学調査から推定された潜伏期間(中央値2.9日[95%CI 2.6-3.2])より短いことから、発症前に二次感染者を発生させている可能性が示唆された。
発症間隔を過小評価している可能性も
今回の報告の分析には制約がある。実地疫学調査では、曝露をうけた可能性のある者すべてが含まれていない可能性があるため、発症間隔を過小評価している可能性がある。精緻な推定値を得るには切り捨てを加味したモデルと十分なサンプルサイズが必要だが、今回は検討できていない。また、同報告は迅速な情報共有を目的としており、内容や見解は知見の更新によって更新される可能性がある。
同報告の最後には、分析に用いたデータ収集に協力をした各自治体関係者および各医療関係者に対し、謝辞が述べられている。
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