臨床試験をめぐっては、被験者が実施医療機関に来院することなく、インターネットやIoTなどの技術や手法を用いて実施するDCTへのニーズが高まっている。被験者に対しては、来院など治験参加の負担を減らすことで参加機会を提供し、治験依頼者はより短期間で被験者を集積できるため、コスト削減や治験実施期間の短縮につながる可能性がある。
厚労省も治験の円滑化の取り組みを進めており、2021年7月には治験実施時に電子カルテから症例報告書に自動転記されるシステムを利用する場合に、全ての治験データで原資料との照合の実施を求めないとするGCP省令ガイダンスの改正を行った。次のターゲットは、遠隔からでも被験者への説明や参加同意取得を実施しやすくするための環境整備だ。現行のGCP省令でもビデオ通話などを用いて説明や同意取得を対面と同等以上に行えるのであれば実施できるが、要件や留意事項が明確になっておらず、個別対応となっていた。
厚労省は、今年度中にオンライン技術を用いた治験の実施方法や各国のルール等に関する調査結果をまとめ、来年度以降に治験の説明や同意取得を適切に実施するための方法やデータの信頼性確保に関するガイダンスを策定する方針。
また、被験者宅で治験に必要な採血や検査を行う際に、訪問看護を活用しやすくできるような規制緩和も検討。現在は、治験実施医療機関に所属する看護師は訪問看護が可能である一方、治験施設支援機関(SMO)や訪問看護ステーションの看護師による訪問看護は労働者派遣法で禁止となっている。治験実施医療機関以外の看護師をどのように活用できるかを整理しており、来年度上期までに必要な措置を講じる。
一方、治験薬の直接配送については、医療機関からの配送は可能だが、治験依頼者から被験者への配送は認められていない。厚労省は海外での取り扱いの状況を調査した上で、実施可否を判断するとしていたが、「海外でも定着しているわけではない」と早期実現は難しい情勢だ。
DCTにおけるオンライン診療の活用は、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に沿った形で実施すれば可能とし、治験実施医療機関のサテライト施設として被験者宅の近隣にある施設の活用についても検討を進めている。