脳ネットワークを可視化、ASD児21人と定型的な発達児25人とで比較
金沢大学は2月2日、5歳から8歳の自閉スペクトラム症の子どもは、そうでない子どもと比較し、神経ネットワークの効率性に関する指標が低下しており、それは社会性の障害と相関があると発表した。この研究は、同大子どものこころの発達研究センターの廣澤徹准教授、大学院医薬保健学総合研究科医学専攻の相馬大輝氏らの研究グループによるもの。研究成果は、「Frontiers in Psychiatry」オンライン版に掲載されている。
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自閉スペクトラム症は、言語・非言語を用いた社会的コミュニケーションの障害を主徴とする代表的な発達障害。これまでの研究で自閉スペクトラム症は特定の脳部位でなく脳全体の障害であり、その特徴を検出するのにグラフ理論を用いた脳ネットワークの解析が有効であることが示されていた。過去の研究から、自閉スペクトラム症では脳ネットワークの効率性に関する指標が低下する可能性が示唆されていた。しかし、幼児期を対象とした研究は少なく、また、検査環境もまちまちだった。
今回、研究グループは、内服薬の無い幼児期の自閉スペクトラム症児に対し、十字マークを注視するという厳密な安静条件で脳磁計の記録を実施。脳ネットワーク全体の効率性を表すとされるスモールワールド性を算出し、定型的な発達の児と比較することで、効率性の低下を検出できると考えた。
研究対象は、5~8歳の自閉スペクトラム症の子ども21人と定型的な発達の子ども25人。産学官連携のプロジェクトで開発した「幼児用脳磁計」を活用し、脳のネットワークを可視化することで、その特徴についてグラフ理論を用いて解析した。
ASDでスモールワールド性低下、社会性低下と相関
解析の結果、定型的な発達の子どもと比較し、自閉スペクトラム症の子どもでスモールワールド性の低下が見られた。その低下は、社会性の低下と相関があることが示された。
自閉スペクトラム症では、脳ネットワークの効率性の低下があることが、幼児における脳磁計計測でも裏付けられた。また、脳ネットワークの効率性の低下が自閉スペクトラム症の症状である社会性の低下と関連していることが初めて示されたという。
今回の研究結果について研究グループは、今後、自閉スペクトラム症児の評価や診断の指標への応用や、より具体的な疾患への理解につながることが期待されるとしている。
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