魚油に含まれるn-3多価不飽和脂肪酸DHA、モルモットから摘出の気管平滑筋収縮反応に対する効果を検討
東邦大学は2月2日、ドコサヘキサエン酸(DHA)が、気管平滑筋のプロスタノイドTP受容体を介した収縮を選択的かつ強力に抑制することを明らかにしたと発表した。この研究は、同大薬学部薬理学教室の田中芳夫教授、小原圭将講師、吉岡健人助教らの研究グループによるもの。研究成果は、「Biological and Pharmaceutical Bulletin」に掲載されている。
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DHAは、魚油に含まれるn-3多価不飽和脂肪酸であり、健康食品成分としても注目されている。DHAの長期的な摂取は、炎症性物質の産生を抑制することにより、気管支喘息を改善する可能性が報告されている。しかし、気管平滑筋の収縮反応に対する即時的な効果については、これまでのところ研究されていなかった。
そこで、研究グループは、気管平滑筋の収縮反応に対するDHAの即時的な効果を明らかにするため、モルモットから摘出した気管平滑筋の収縮反応に対するDHAの効果を検討した。
DHA、U46619やPGF2αによる気管平滑筋の収縮反応を強力かつ即時的に抑制
研究グループは、マグヌス法を用いてモルモットから摘出した気管平滑筋の収縮反応に対するDHAの抑制効果を検討。DHA(3×10−5M)は、低濃度のU46619(10−8M)およびプロスタグランジン2α(PGF2α)(5×10−7M)によって誘発される気管平滑筋の収縮反応を強力に抑制。また、U46619(10−8M)およびPGF2α(5×10−7M)による気管平滑筋の収縮反応は、プロスタノイドTP受容体拮抗薬であるSQ29,548(10−6M)によって有意に抑制された。一方、より高い濃度のU46619(10−7M)およびPGF2α(10−5M)に対しては影響を与えなかった。
これらの結果を裏付けるように、DHA(4×10−5M/6×10−5M)は、U46619(10−9–10−6M)およびPGF2α(10−8–10−5M)の濃度応答曲線を濃度依存的に気管平滑筋の収縮反応を抑制。ただし、U46619/PGF2αに対するDHAのシルトプロット解析の回帰直線の傾きは1より大きいものであり、DHAの抑制効果には、プロスタノイドTP受容体拮抗作用に加えて、それ以外の機序が関与する可能性も示唆された。
対照的に、DHA(4×10−5M)は、アセチルコリン(ACh)(10−8–10−4M)やヒスタミン(10−8–10−4M)、ロイコトリエンD4(LTD4)(10−11–10−7M)によって誘発される収縮反応に対しては有意な抑制効果を示さなかった。
これらの結果から、DHAがAChやヒスタミン、LTD4による収縮反応には影響を与えずに、トロンボキサンA2(TXA2)の安定誘導体であるU46619やPGF2αによる気管平滑筋の収縮反応を、強力かつ即時的に抑制することが明らかなった。
DHA、炎症性物質増加に関連する気管支喘息改善の可能性
これらの知見は、DHAがこれまでに報告されている抗炎症作用に加え、TXA2やPGF2αによる気管/気管支平滑筋の過収縮を即時的に抑制することで、これらの炎症性物質の増加に関連する気管支喘息を改善する可能性を示唆している、と研究グループは述べている。
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