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オミクロン株症例の積極的疫学調査(第4報):疫学的・臨床的特徴-感染研ほか

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2022年01月31日 AM11:30

国内におけるオミクロン株の疫学的・臨床的特徴を迅速に把握する目的

(感染研)は1月28日、「 B.1.1.529系統()感染による新型コロナウイルス感染症の積極的疫学調査(第4報): 疫学的・臨床的特徴」と題した速報を発表した。この報告は、感染研と国立国際医療研究センターの国際感染症センターが、大阪市立総合医療センター、沖縄県立南部医療センター・こども医療センター、国際医療福祉大学成田病院、国立国際医療研究センター病院、千葉大学医学部附属病院、沖縄病院、長良医療センター、福岡東医療センター、市立ひらかた病院、豊島病院、都立駒込病院、都立墨東病院、成田赤十字病院、横浜市立市民病院、りんくう総合医療センターからの情報を基にまとめたもの。なお、同報告は迅速な情報共有を目的としたものであり、内容や見解は知見の更新によって変わる可能性がある。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)においては、B.1.1.529系統の変異株(オミクロン株)が、2021年11月末以降、日本を含む世界各地から報告され、感染・伝播性や抗原性の変化が懸念されている。国内におけるオミクロン株の疫学的、臨床的特徴の報告は限られている。そのため、国内におけるオミクロン株の疫学的、臨床的特徴を迅速に把握することを目的として、検疫および国内にて、初期に探知されたオミクロン株症例について積極的疫学調査が行われた。同調査は、厚生労働省、国立感染症研究所において、国立国際医療研究センター国際感染症センターおよび関係医療機関・自治体の協力のもと、感染症法第15条第2項の規定に基づいて行われた。

対象は若年層が多く、多くが海外渡航歴あり、4割が濃厚接触

対象症例は、「2021年11月29日から2022年1月12日までに同積極的疫学調査協力医療機関に入院し診療を行った感染者」かつ「ゲノム解析によりオミクロン株が確定した感染者」とした。また、調査内容は、基本情報、渡航情報、新型コロナウイルスワクチン接種歴、基礎疾患、入院時のバイタルサイン・臨床症状、入院時の検査所見、入院期間中に観察された臨床症状、合併症、入院中の治療、入院経過・退院時転帰とした。

調査対象は122例で、男性79例(64.8%)、女性43例(35.2%)だった。年齢の中央値(範囲)は33(0-78)歳で、40代26例(21.3%)、20代23例(18.9%)の割合が多かった。60歳以上は10例(8.2%)で、今回の調査対象の年齢層の中心は比較的若年層だった。

検疫法による入院が78例(63.9%)、感染症法による入院が44例(36.1%)だった。出身国は日本が最多だった(96例、78.7%)。BMIの中央値(四分位範囲)は22.2(19.0-25.3)kg/m2で、30例(24.6%)に喫煙歴、66例(54.1%)に飲酒歴を認めた。

多くの症例(87例、71.3%)に発症前14日以内に海外への渡航歴があり、主な渡航国(トランジットを除く)の内訳は、米国(32例、36.8%)、英国(12例、13.8%)、コンゴ民主共和国(6例、6.9%)、ナイジェリア(5例、5.7%)が多かった。

50例(41.0%)に発症前14日以内のCOVID-19確定例もしくは疑い例との濃厚接触歴を認めた。主な接触歴の内訳は、家族20例(16.4%)、航空機の機内8例(6.6%)、職場7例(5.7%)、友人5例(4.1%)だった。33例(27.0%)に発症前14日以内の同居家族以外での集団での飲食歴、18例(14.8%)にいわゆる3密空間への滞在歴を認めた。発症から入院までの期間の中央値(四分位範囲)は、3(2-4)日だった。

過半数がワクチン2回以上接種、基礎疾患なしが多数

122例におけるワクチン接種歴は3回3例(2.5%)、2回77例(63.1%)、1回2例(1.6%)、接種なし40例(32.8%)で、80例(65.6%)に2回以上のワクチン接種歴があった。ワクチンの種類は、3回接種者は、2例が1回目と2回目アストラゼネカ製、3回目ファイザー製、1例が1回目ジョンソン・エンド・ジョンソン製、2回目と3回目ファイザー製で、2回接種者は、ファイザー製44例(57.1%)、武田/モデルナ製25例(32.5%)、アストラゼネカ製6例(7.8%)、不明2例(2.6%)、1回接種者は武田/モデルナ製とジョンソン・エンド・ジョンソン製が各1例ずつだった。5例(4.1%)に過去のSARS-CoV-2感染歴が認められた。

122例において、何らかの基礎疾患を有した症例は30例(24.6%)であり、基礎疾患を有していないものが多数(92例、75.4%)だった。基礎疾患は、高血圧(14例、11.5%)、脂質異常症(9例、7.4%)、肥満(6例、4.9%)の頻度が多かった。入院時の体温、脈拍数、呼吸数の中央値(四分位範囲)は、それぞれ36.8(36.5-37.2)℃、86(77-98)回/分、18(16-20)回/分で、酸素飽和度の中央値(範囲)は、99(95-100)%だった。

肺炎少なく重症治療なし、主症状は発熱・咳嗽・咽頭痛・鼻汁で嗅覚・味覚障害は少ない

入院時に93例(76.2%)が何らかの症状を呈していた。一方、入院時の無症状者は29例(23.8%)で、うち4例が入院後に何らかの症状を呈した。COVID-19診断による入院時の主な症状は、咳嗽(55例、45.1%)、37.5℃以上の発熱(40例、32.8%)、咽頭痛(40例、32.8%)、鼻汁(25例、20.5%)で、嗅覚障害は2例(1.6%)、味覚障害は1例(0.8%)に認めた。

入院時に122例のうち、107例が胸部レントゲン検査もしくはCT検査を受けた。そのうち肺炎像を認めた症例は少なく、7例(6.5%)に肺炎像(胸部レントゲン検査3/91例、3.3%、および、胸部CT検査5/39例、12.8%)を認めた。入院時の血液検査所見は、概ね正常範囲内で、白血球数の中央値(四分位範囲)は5,000(3,900-6,400)/µLで、CRPの中央値(四分位範囲)は0.4(0.1-1.2)mg/dLだった。

122例中21例(17.2%)にCOVID-19への直接的な効果を期待して治療介入が行われ、101例(82.8%)が対症療法のみだった。治療介入の内容は、ソトロビマブ16例(13.1%)、カシリビマブ/イムデビマブ4例(3.3%)、レムデシビル3例(2.5%)だった。抗菌薬投与は3例(2.5%)に、抗血栓・抗凝固療法は2例(1.6%)に行われた。入院期間中に酸素投与を行われた者はおらず、ICUでの加療や、人工呼吸器や体外式膜型人工肺(ECMO)の使用といった重症治療を受けた者は認めなかった。

全入院期間の中央値(四分位範囲)は11(9-13)日だった。細菌性肺炎や急性呼吸切迫症候群(ARDS)の合併例は認めなかった。発症から退院までの期間に観察された主な症状は、37.5℃以上の発熱(71例、58.1%)、咳嗽(66例、54.1%)、咽頭痛(50例、41.0%)、鼻汁(40例、32.8%)で、味覚障害は10例(8.2%)嗅覚障害は8例(6.6%)に認めた。これまで特徴的とされていた嗅覚・味覚障害の割合は少なかった。なお、25例(20.5%)が退院まで無症状で経過した。117例(95.9%)が自宅退院し、3例(2.5%)が医療機関へ転院し、2例(1.6%)が医療機関以外の施設へ入所した。死亡例は認めなかった。

対象者や入退院基準の変更など複数の制限あり

今回の調査には複数の制限がある。はじめに、同調査の対象は、積極的疫学調査協力医療機関で入院診療を行ったゲノム解析によるオミクロン株確定例の初期の患者であり、ゲノム解析で確定診断できていない疑い例は調査対象にしていない。

2つ目に、調査期間中に、オミクロン株確定症例の入退院基準の変更が、知見や状況に合わせて行われている。当初、原則全例入院の上、退院基準として、核酸増幅法または抗原定量検査による2回連続の陰性確認が必要とされていたが、2022年1月5日、ワクチン接種者においては、退院基準を従来のB.1.617.2系統の変異株(デルタ株)等と同様の取扱いとすることとなった。また、自宅等の療養体制が整った自治体における感染急拡大時の対応として、医師が入院の必要が無いと判断した無症状病原体保有者や軽症者については、他の新型コロナウイルス感染症患者と同様に、宿泊療養・自宅療養とすることとして差し支えなくなった。さらに、1月14日、ワクチン接種の有無に関わらず、退院基準を従来のB.1.617.2系統の変異株(デルタ株)等と同様の取り扱いとすることとなった。これらの入退院基準の変遷を同調査では考慮していない。

3つ目に、国内で早期に探知された症例は、比較的若年層であり、基礎疾患を有する者が少なかった。このため、同調査結果のみで、COVID-19の重症化リスクが高いとされる高齢者や基礎疾患を有する者における重症化リスクを評価することは困難である。なお、10例(8.2%)の60歳以上では、7例(70%)に何らかの基礎疾患があり、9例(90%)がワクチン2回以上接種しており、全例有症状であったが、9例(90%)にソトロビマブが投与され、重症化した症例は認めなかった。

4つ目に、同調査は初期に探知された症例から収集された情報のため、検疫法による入院が多く含まれており、国内流行の疫学的特徴(年齢、性別、ワクチン接種歴、渡航歴、接触歴等)とは異なる可能性が高い。

同報告の最後には、同調査に協力をした各自治体関係者および各医療関係者に対し、謝辞が述べられている。

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